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データ直販サイト「Gumroad」が動画のレンタル事業を開始した。現時点で28,000本のビデオがレンタル可能となっている。
コンテンツ所有者は作品のレンタルや販売を自分の望む価格で行うことができる。レンタル期間は30日間で、レンタル開始日から72時間以内は何回でも鑑賞できる。
2012年に設立されたGumroadは現在、約15万点の作品を掲載。およそ1万人のクリエイターらが参加しているが、その多くはアマチュアだ。販売者はファイルをアップロードし、リンクを作成した後にSNSなどで商品を広告する。支払いはクレジットカードで行い、購入者はコンテンツのリンクをメールで受け取るシステムになっている。
「ビジネスが軌道に乗ったのは1年半ぐらい前ですね」と話すのは創始者のサヒール・ラビンギア氏。サンフランシスコから電話インタビューで答えてくれた。
「音楽コンテンツから始めて、次に出版物の取り扱いを始めました。今では出版関連がアイテムの主流になっています」
創業当時19歳だったラビンギアは、屋根裏部屋のような小さなオフィスでサイトを運営していた。その後、彼は810万ドルもの出資を獲得。現在の従業員数は20名。資金には困っていないが、現状ではまだ大きな収益も出していない。しかし、Gumroadはインディペンデントなクリエイターらが、作品をダイレクト販売できるプラットホームを確立した。
昨年12月には世界的出版社のアシェット社とも契約を締結。ツイッターで100万人のフォロワーを持つ作家、アマンダ・パルマー氏がGumroadで著作を公開したところ、わずか20分間で100冊が購入された。
Gumroadは大手企業の「Hulu」や「ネットフリックス」をライバル企業とはみなしていない。金のかかった大作ドラマや映画ではなく、独立系のアーティストらが、自らの作品を直接販売できる場所を提供するのが同社の使命だと考えている。
「振り返ってみると、創業から3年ほどは、あまりお金儲けのことは考えていなかった。けれど今は、単にモノを売るという機能を提供するだけでなく、クリエイターたちが生計を立てるために、もっと何かが出来るのではないかと考えています」とラビンギアは言う。
ラビンギアはフォーブスが30歳未満のビジネスパーソンに贈る「サーティー・アンダー・サーティー」のテクノロジー部門賞も受賞している。
Gumroadは昨年からiPhone向けアプリの配信も開始。アンドロイド版も先月公開したばかりだ。これで外出時にもストリーミング視聴や読書ができるようになった。
コンテンツの販売者にとってGumroadは利用手数料の安さでも知られている。同社が徴収するのは販売総額の5%と、1セールスにつき25セントの手数料のみ。イーベイの9%、iTunesの30%の手数料と比較すると格段に低い。Gumroadを利用するクリエイターの中には、年間10万ドルを超える収入を得ている者もいるという。
「レンタル機能は我が社の将来のビジネスにおいて、必須のものになる」と、経営幹部の一人、ライアン・デルク氏は言う。
「今後は映画関係者だけでなく、全ての映像クリエイターたちに発表の場所を提供していきたい」
映画監督のデシリー・アクハバンも、自身の作品「Appropriate Behavior』をGumroadで公開した。「自分の映画をユーザーに直接届けることができるという、素晴らしい時代に生まれてとてもラッキーだ」と彼女は語っている。
アクハバンのようなクリエイターらは今後、「キックスターター」などで資金を調達して作品を制作。そして、Gumroadから直接ユーザーに配信するといったビジネスモデルを実現できる。Gumroadがその薄利経営を今後も継続できるのであれば、アーティストらは既存の業界のビジネスモデルに縛られず、生きていくことが可能になるだろう。