電子遺書は、内容をテキスト形式で記さなくてはならない。フロリダ州法とULCのe遺書法、いずれの場合も、録音や録画は遺書としての条件を満たさない。
また、証人も必要だ。統一州法委員会は、証人が遺言者から離れた場所にいる場合でも可能とするか、署名の際に遺言者と同じ場所で立ち会うことを義務づけるか、そのいずれかを州が選択できるようにしている。フロリダ州は、詳細な条件を満たしていれば証人が遠方にいても可能であると定めている。
電子遺書はまた、遺言者が脆弱な状態にあると判断された場合(高齢者養護施設に入居しているケースなど)には、受諾されないか、有効だとみなされない。詐欺行為に遭っていたり、不正な影響下に置かれていたりする可能性が大きすぎると考えられるためだ。
電子遺書は、いったん作成されたあとも、電子上か従来の方法で、無効化したり変更したりすることが可能だ。統一州法委員会は、電子遺書のファイルを削除したり、ハードディスクを破壊したりした場合には、状況次第で遺書が取り消されたと判断すると述べている。
とはいえ、州が独自のe遺書法を成立させても、エステート・プランナー(相続に関わる専門職/弁護士)が電子遺書を導入するまで、しばらく時間がかかる可能性がある。
たとえば、フロリダ州のe遺書法では、認定保管者が電子遺書を保存することが義務づけられている。遺言者が自分のスマートフォンやタブレット端末、コンピューターにただ保存しただけでは有効とはならないのだ。
電子遺書の認定保管者になるには、テクノロジーとインフラに多額を投資しなくてはならない。大半の法律事務所はおそらく、投資ができないか、そのつもりがないかのいずれかだろう。
遺産相続の手続きを請け負うフロリダ州の弁護士の大半は、自分が属する弁護士事務所が電子遺書用テクノロジーを導入し、認定保管者としての地位を確立するまで、電子遺書サービスを提供することができない。
e遺書法では、認定保管者に関する必要条件が定められていない。各州がe遺書法を導入していくなかで、認定保管者に関する要件を盛り込む州がどの程度あるのかは興味深いところだ。