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2019.12.29

働き方を見直し「楽しく勝てる」企業へ。ソフトウェア開発の老舗が目指す到達点とは

「おたくの社員さんは笑顔の人が多いですね、と他社の方からよく言われるんですよ」

組込みソフト開発企業の老舗、イーソル代表取締役社長の長谷川勝敏はそう言って胸を張った。

イーソルは1975年創業。組込みOS・開発環境・各種ミドルウェアをを自社開発、販売し、デジタルカメラなどの情報家電製品から車載情報機器や人工衛星システムにいたるまで、数多くの組込みシステムを作る。長谷川が平社員だった30年ほど前は、残業や休日出勤が当たり前の社風だった。

ソフトウェア開発業界の仕事は、納期に収めることが絶対であり、残業、徹夜は当たり前といった業界全体の風潮がある。長時間、休日なしで働き続けた結果、心身を壊し、離職せざるを得ない状況に追い込まれかねない。長時間労働はソフトウェア開発業界全体が抱える課題でもある。

元々残業が嫌いな長谷川は、自分に割り振られた仕事に対して中・長期のスケジュールを組み、定時内に済ませるように作業していたが、職場内で定時で帰るのは長谷川ぐらいというほど異色の存在だった。長谷川は当時をこう振り返る。

「周囲の人を上回る結果を出して定時で帰っても、残業している人の方が評価されている。そこは疑問に思っていました」

長時間働く人間が「頑張っている」と高く評価される時代。当然残業代もつくため、同じ仕事をして定時で帰る長谷川よりも、残業をしている同僚の方が、多くの収入を得ていたという。

「イーソルスピリット」で立てた誓い

長谷川は仕事の実力はもちろんのこと管理能力も高く評価され、36歳の若さでソフトウェア事業のトップである事業部長に就任した。2011年には企業理念「イーソルスピリット」を制定。革新的なコンピューターテクノロジーによって市場を創造し、社会を豊かにすることを使命とする「ミッション」、世界中で活躍する世界トップクラスのテクノロジーカンパニーを目指す「ビジョン」、卓越性の追求やスピード重視、絆といった「バリュー」、そして『楽しいチャレンジ』を生きる、という『コアスピリット』を掲げた。

社会的な機運が高まる前から働き方改革に取り組み始めた狙いについて、長谷川はこう語る。

「チャレンジすることは何でも楽しいということ。次に人材不足。働き方を見直さないと生産性が上がりません。さらに、今後介護や育児などで人手が足りなくなる。それらを総合して、『楽しく勝てる』企業になるか、が重要だと考えました」

2013年には代表取締役社長に就任。楽しい”働き方”チャレンジ、略して「THC」プロジェクトはその前年の2012年からスタートさせた。4期にわたる働き方見直しの取り組みを経て、プロジェクトの成果を一過性のものとしないために、出産・育児、介護といったさまざまなライフイベントと仕事の両立支援制度、多様な働き方・多様な休み方のための各種制度を整備した。

プロジェクト開始当初は社内の反応が悪かったという。「人事がまた新しい無茶なことを始めた」と社員からの反発を買ってしまう危惧もあり、当初より、全社員のための取り組みであることを前面に打ち出していた。それでも、単なる残業削減の取り組みではないか、育児中の社員の優遇ではないかという疑問も持たれたという。

「育児や介護というと、実情として女性に負担が偏りがちで時間制約のなかで働くケースが多い。そういった社員を大事にするためのプロジェクトじゃないかと思われたのです」

特に拒否反応を示したのは管理職だ。産休・育休後復帰した社員など、時間制約のある社員は上司として使いづらい。10〜20年前までは、上司が言葉には出さずとも、態度や評価で居心地を悪く感じさせることが多かったという。その結果、育児に直面した社員が多く辞めていく風潮があった。その問題を解決するために、時間ではなく能力で評価していく活動を進めた。

「仕事は成果であり時間は関係ない。むしろ早く帰ったほうがいい」という意識を社員に植え付けた。限られた時間で仕事ができるのは有能であるという考え方へと変化したことにより、出産や育児などを理由とした退職希望者も減少した。こうした実力主義が浸透するまでに3年かかったという。

「THC」プロジェクトを始めるにあたり、まずは管理職、そして全社員に対して働き方改革に関するセミナーを実施した。さらに各事業部から自発的に手を挙げたプロジェクトチームが、業務やコミュニケーションの改善に挑戦。その取り組みを年二回行われる成果発表会で公表し、翌年にはまた違うプロジェクトチームを作り……と参加者数を広げ、プロジェクトの取り組みや成果を共有していった。

初年度は3チームで始めたプロジェクトは、2年目、3年目と徐々にチーム数を増やす一方で外部コンサルタントのサポートを少なくし、4年目にはほぼサポートなしでプロジェクトを展開、自走体制をより強化した。

また、社内向けに具体的な成果を数字にして見せることで、最初は懐疑的だった社員も、次第に賛同するようになっていったという。


THCの成果報告会


コミュニケーションの強化で、社員の不満を解消

現在もさまざまな「THC」を土台として、さまざまな人事施策に取り組んでいる。人材育成や自己申告制度などの「キャリア開発支援」、育児と仕事、介護と仕事などの「両立支援」、そして多彩な働き方の支援として、始業時刻変更制度や裁量労働、テレワークの導入などだ。さらに多彩な休み方のための積立保存有給休暇やリフレッシュ休暇、生産性の高い人材を評価する人事考課を導入。業務やコミュニケーションの改善を通して、生産性や付加価値を向上するための活動を続けている。

もちろん会社として、生産性は落とさないことも同時に重要視する。離職率の高い業界だからこそ、社員の不満をどう解消していくか。

長谷川は、コミュニケーションの強化で解決を図った。

不満のある社員のいる部署は大概においてコミュニケーション不足が見られる。お互いの意思疎通がうまくいかないことで、業務にも支障が出る。「THC」では、朝メール・夜メールといったお互いの状況の共有、そして短時間勤務の社員も会議に参加できるよう、全社員がいる時間帯での会議など。チーム内での意見交換や、各自の状況を共有する機会を増やしていった。

また、「THC」に取り組んだあるチームは、会議の3つのルール「を作った。その1、『イイね! と言おう』。その2、『否定のみはご法度』、その3、『カッコつけるのはカッコ悪い』。それまで参加者それぞれが問題点を認識し、改善策を内心考えていたとしても発言しにくかった雰囲気が改善。「発言してもいいんだ」「意外とみんな同じことを思っているんだ」ということが伝わり、自発的に発信できるようになっていったという。このルールは「eSOL “3” Meeting Manners」として全社に展開した。

2012年から始めた働き方改革により、2012年と比べて2018年の平均残業時間はマイナス12%に対し、売上高はプラス59%。平均勤続年数は平均で1.8年伸びて10.9年と同業他社より長く、有休取得率は75.1%になるという。

社外からの評価として、厚生労働省より、高い実績を上げた「子育てサポート企業」 に付与される「プラチナくるみん」の認定を受けた。さらに、一般財団法人日本次世代企業普及機構の 「ホワイト企業アワード」 で 第1回「女性活躍部門」、第2回「ホワイト制度部門」、第3回「EAP部門」と3回連続で受賞した。厚生労働省が、従業員の自律的なキャリア形成支援について他の模範となる取り組みを行っている企業を表彰する「グッドキャリア企業アワード」では2016年に「イノベーション賞」も受賞している。

今後は男性の育児休業取得率のアップに向けても新たな試みを行う。2016年に全社員に対し、男性の育休取得についてメッセージを発した。2016年からの3年間の取得率は25%、直近1年間では40%と大幅に伸びた。また2014年以降に男性育休を取得した社員の平均取得日数は約100日と着実に成果を上げているが、長谷川は「まだまだこれから」と語る。また、2020年からフレックス制度も導入し、さらに多様な働き方改革で社員のモチベーションを上げていくという。

「”カエル・アワード”という表彰をしたんですよ」と、長谷川は笑顔で話した。



「THC」の取り組みに「カエル活動」というものがある。これは、早く帰る、自分を変える、社会を変える、といった様々な「カエル」に引っ掛けたもの。活動の一環である定時退社日は「カエル・ディ!」と呼んでいる。THCのプロジェクト参加者の中から選ばれた”カエル・アワード”受賞者には、カエルの帽子をかぶってもらい表彰したという。

カエルの帽子を笑顔で渡す社長と笑顔で受け取る社員。能力重視、コミュニケーションが取れている『楽しいチャレンジ』会社だからこそできる、粋な計らいと言えるかもしれない。




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