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2020.01.04

不可能と言われても…建設コンサルタントのリーディングカンパニーが、業界全体を働き方改革の渦に巻き込む

「社員には働き方改革のその先を行けと、けしかけています。『ダイバーシティ&インクルージョン・ネクスト』ですね」

建設コンサルタント業界のリーディングカンパニーであるパシフィックコンサルタンツの代表取締役社長・重永智之は、働き方改革においても業界の先駆者であるべきという思いが強い。

建設コンサルタントとは、橋やトンネル、ダムなど、国土保全や交通基盤分野の社会インフラサービスを計画・調査・設計・管理の側面からプロデュースする仕事。主な仕事相手は発注者である国や地方自治体などで、公共施設の設計を行なっているが、最近では民間事業や国際市場へも事業が広がっている。


100%にこだわる職人肌の社員が多い業界

「柔軟な働き方を可能とする制度自体は昔からありました。でも、業界自体が長時間労働は当たり前、という風潮でしたね」

重永がパシフィックコンサルタンツに中途入社したのは1987年。その当時から週休2日制、1日の所定労働時間は7時間と決められていた。しかし、主な取引先である官公庁は役所の予算の都合上、年度末の3月に締め切りが集中する。残業や土曜出勤で仕事をこなすのは一般的なことだった。

土木関係の仕事は慢性的な長時間労働、男性中心の職場といったイメージが強い。学生に魅力を感じてもらえない環境のままでは、会社の将来に不安がある。そこで、業界でいち早く働き方改革へと着手することとなる。

もともとフレックス制度もあり、柔軟に自分流の働き方ができる社風ではあった。しかし、「職人肌の社員が多いのも弊社の特徴」と重永が語るように、良いものを作り上げるため、時間を気にせず、とことん掘り下げる傾向が強い。合格点を超えてもなお、100%にこだわって仕事をする、といったケースも多々あった。その結果、22時以降の残業や終電を逃して深夜タクシーでの帰宅、土曜出勤などの長時間労働が常態化していた。

「時間に対する意識があまりなかった。休日出勤すればいいや、といった感覚で、今思えば集中してやっていなかった」と、重永は当時を振り返る。

職人肌の社員の中には人から働き方について指摘されることに反感を覚える者や、はなから無理だと諦める声もあったという。経営陣も本心では「できるわけがない」と思っていたという。

しかし、社長直轄の働き方改革プロジェクトの実施を決めた、重永の2代前の社長であった長谷川伸一は「働き方改革を実行するということは、生産性を上げるということ。会社の業績を伸ばすためならやるべきだと」と考えていた。

そこで同社は、業界的に不可能と思われていた改革を始めることとなる。


グループの働き方の課題とそれに対する解決策を話し合い、自分たちの働き方を考える取り組みを実施

同業他社にも影響を及ぼした「ノー残業デー」

2011年5月からワーク・ライフバランスプロジェクトをスタート。働き方を変えたい組織を募り、組織の最小単位であるグループが自主的な取り組みを実施した。その中でグループごとにどんな働き方をしたいか、そのためにはどうすればいいのか、といった各グループの課題やビジョンを考えさせ、徹底的に話し合った。

その中で取り入れたのが「朝メール」だ。同じ部署の人同士が、30分刻みで1日の仕事のスケジュールを共有。誰がどんな仕事をしているのかが明確化され、その流れを見て、優先順位を上司がアドバイスしたり、助けが必要な人には補助をつけたりする。「見える化」によって、組織としての働き方を意識するようになり、仕事がスムーズになり、コミュニケーションの円滑化に繋がった。

そして、形骸化していた「ノー残業デー」を実効性のあるものとした。「録音テープでは誰も聞いていなかった」という終業前の社内放送を、役員や部長が生放送で実施。どうしても残業しなければならない場合には本部長までの申請手続きを必須としたこともあり、最近ではほとんどの社員が残業をせずにオフィスを離れるという。

「申請を出してまで今日残業しなければいけないことなのか、明日に持ち越してもいいものなのか、社員が考えるようになりました」

重永は残業について常々こう思っている。「今日しなくてはならない仕事は、優先順位など関係なしに取り組むはず。もし、優先順位をつけられる仕事であれば、それは明日だっていい、ということなのです」

パシフィックコンサルタンツが率先して始めたノー残業デーは同業他社にも影響を及ぼした。2013年10月には、同業14社に呼びかけて「業界一斉ノー残業デー」を実施した。2014年6月には19社、10月には業界全体を巻き込んで建設コンサルタンツ協会主催の一斉ノー残業デーを行うなど、広がりを見せた。

さらに、土日も含めた連続10日以上の休暇取得の奨励や、長時間労働の撲滅の取り組みを進めた組織への表彰も実施。職場のコミュニケーションの活性化につながるとして、社員の家族を会社に招待する「ファミリーデー」も開催している。

また、年齢・性別・ライフスタイル・国籍など、一人ひとりの個性を尊重し、多様性を強みとして価値提供に活かすインクルージョンまでを含めた”D&I(ダイバーシティインクルージョン)経営“を推進した。2015年10月には「D&I推進方針」を制定。2020ビジョンとして「多様な技術・感性をもつ人材が個性を活かし、コンサルタントやサービスプロバイダーとして社会の要請に応え、活き活きと活躍する職場」を目指している。

1年間の残業時間は2009年10月から2010年9月の1年間と比較して79.6%まで削減することができた。2017年には経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」を受賞した。

男性も育児休業を取りやすい企業文化に

それでも重永は、まだ道半ばだと言う。さらなる高みを目指して掲げた目標の一つが、「男性育休取得率100%」だ。

ワーク・ライフバランスの小室淑恵が提言した「男性育休100%宣言」に、建設コンサルタント業界の中で真っ先に手を挙げたと話す重永。「実現できるかどうかを検討するのではなく、まずは手を挙げて、そこから考えて実行していこうと」

現在、社内の男性育児休業の取得率は増えてはいるが、100%にはなかなか近づかない。さらに取得しやすい環境にするアイデアが出てこないか期待している。

重永が就職した昭和の時代は、女性総合職はなく、女性はお茶汲みやコピー、そして寿退社が当たり前だった。だがパシフィックコンサルタンツは、その当時から男女共に総合職一本しかなかった。今年の新入社員でも58人中20人が女性、来年も入社予定の3〜4割が女性だ。優秀な技術者も多く、様々な分野で活躍している。

スキルアップした女性人材が結婚や出産などで辞めてしまうのは、社会全体の損失につながる。だから、男性の育児休業取得は当たり前という意識を浸透させることが重要だと重永は考える。

パシフィックコンサルタンツでは、2014年4月から産前産後休暇および育児休業から復帰した社員への励ましと期待のメッセージを、社長から直筆の「手紙」として送っている。赤い台紙の手紙に、社員一人ひとりに異なるメッセージを書いているという。男性も育児休業を取りやすい企業文化を育むためであり、女性にとっても復帰後の意欲を高めるのに一役買っている。



2018年10月に重永が社長に就任してからは、現在まで男性社員6人、女性社員6人に直筆レターを作成した。どんな内容なのか。重永はこう明かす。

「男性社員には、『奥さんの子育てが大変なのがわかったでしょう?』と。 女性社員には、『周りがサポートするから安心して職場復帰してほしい』と励ますようなものですね」

手紙を受け取った社員からはお礼のメールも届くという。

「育児休業を取得した男性社員には先導役となって、後輩たちに、『とっていいんだよ』というメッセージを伝えてほしいですね」

現在は部署によって、育休取得者の割合に違いが出ているという。最初に育休をとる人がいれば、後はその人に続く。その背中を押してあげたいと話す。

今後の働き方改革について尋ねると、重永はこう答えた。

「最終的な目標は、社員がありのまま、自然体で働けることですね」

自然体で働くためには、社員一人一人が「自律」し、コントロールができること。自律のレベルが上がれば、制度、仕組みなどは必要ない。それが理想形だと重永は力説する。

「これからの仕事はボーダレスとなり、たまたま働く場所が日本であったり海外であったり、ということになるでしょう。世の中の変化のスピードの速さを感じとり、動きを見て、前に進んでいきたいですね」





【#もっと一緒にいたかった 男性育休100%プロジェクト】




がむしゃらに働き、家庭をかえりみない…。そんな働き方はもう時代遅れだ。7社の名だたる企業のトップが宣言した「男性育休100%」。パートナーや子供と「#もっと一緒にいたかった」という後悔と誠実に向き合いながら、次世代のビジネスリーダーにその熱い思いを届ける。

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