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2020.01.08 11:00

「まだまだ進化の余地はある」アパレル業界の老舗大手がデザインする、クリエイティブな働き方のかたち 

オンワードホールディングス代表取締役社長 保元道宣

オンワードホールディングス代表取締役社長 保元道宣

「私たちは社内で、『働き方デザイン』と言っているんですよ」

創業93年、オンワードホールディングス(以下オンワード)の代表取締役社長、保元道宣は同社が取り組んでいる働き方改革についてこう語る。アパレル業界の老舗にふさわしいネーミングかもしれない。


最も多忙な「23区」「自由区」を改革のロールモデルに

同社は業界内で働き方改革の先駆者となるべく取り組みを進めている。オンワードは「23区」や「自由区」などの自社ブランドのほか、ジル サンダーやポール・スミスといった海外有名ブランドも展開するアパレル大手として知られる。

「これからは人口減少の時代がやってくる。高度成長期やバブル期のように、休みを返上して頑張れば、そして長い時間をかければいい、という成功体験は通じません。一人一人の多様な生活の中から生まれるアイデアが、競争力へとつながっていくのです」

保元は、働き方デザインの狙いについてそう話す。

1日のほとんどを仕事ばかりに取り組む旧態依然の仕事のやり方に危機感を感じたきっかけは、2018年の夏。ワーク・ライフバランスの小室淑恵が行った、働き方改革に関する講演だった。老舗アパレルとして、働き方デザインを断行するのには、長く染み付いた慣習を変えていかねばならない。保元は、2019年5月に小室を社外取締役に招聘。本格的な改革に着手することとなる。

まずは、社内で最も多忙を極める部署である「23区」「自由区」といったブランドの本社事業本部を改革のロールモデルとした。ワーク・ライフバランスのチームにも参加を求め、2020年2月をめどに改革を進めている最中だ。

「社内で一番忙しい部署で働き方デザインが実現したら、他の部署でも可能になる」と、保元は考える。業務内容を精密に分析し選択と集中をはかり、段階を踏んで何が必要で何が無駄なのかを取捨選択していく。

「特に、商品開発部門はクリエイティブな感性が必要となります。本来は優れた感性やアイデアをファッションに具現化していかなければいけないはずですが、彼らは日常の雑事に追われて疲弊している。彼らの働き方が変わることで社内への波及力を高め、ひいては会社の競争力へとつながっていくと考えました」

働き方について、部署全体で活発な議論を重ねる。そして自分たちの裁量で変えられるところは変えていく。最初は無関心だった社員たちが、議論を重ねることで、改革を前向きに考えるようになったという。保元は、今後のオンワードならではの働き方への答えが半分ぐらい出てきている、と手応えを感じている。

部署によっては始業時間を50分早め、その分早く帰れるようにする。また18時30分 に閉館し残業を少なくする、といった取り組みも始めた。

また、社員の多様な働き方を推進するための行動計画を策定。業務スケジュールの共有化や時間管理の意識づけ、最大で3歳を超えた4月末までの育児休業、また小学4年生の4月末まで取得可能な育児短時間制度の導入などの取り組みを進めている。



2019年8月からスタートした働き方デザインプロジェクト。その取組みの一つとして東京地区のリーダーを集め、働き方改革推進リーダー研修が開催された

クリエイター独特のカルチャーを変えていく

しかし、改革を進める上で、同社にはアパレル業界ならではの壁が存在する。それは店頭販売だ。接客を担当する社員やスタッフは、土日や祝日も終日対応することとなり、一般的な土日休みとすることができない。

また、クリエイティブな部署のカルチャーも特徴的だ。保元の言葉を借りれば、クリエイティブに関わる社員は「生真面目」そのもので、自分のミッションに対し責任を持って取り組む。その反面、自分一人で全うしようと考え、周囲に頼る、人に任せることがなかなかできないという。流行の最先端を行く仕事だからこそ、長期的なブランクが発生することも不安要素の一つとなり、まとまった休みを取ることを躊躇しがちだ。

「縄張り意識、自己防衛意識、ではないけれど、今後は責任感の強さを取り払って、何事もシェアしていく必要がある」と、保元もクリエイター独特のカルチャーを変えていく必要を感じている。

部内、または外部で信頼のおけるパートナーを作り、お互いが情報をシェアしていくことで、誰かが休んでも仕事のクオリティが低下しないシステムを構築する。そしてオンラインショップなどの活用で、売り上げを落とさない工夫を凝らす。また、店頭の営業時間を短縮するなど、社員が会社に縛られない方法を模索している。

「育児休業などで長期の休暇を取るとなった場合、復帰した時に自分の居場所はあるのか、自分は必要とされるのかと、誰しもが不安に感じるかもしれません。それでも『休んでも大丈夫、居場所はなくならない』ということを社員に浸透させ、彼ら彼女らの不安を払拭させていかなくてはいけません」

そうした意識の浸透には時間がかかると保元は考える。急速的な改革で社員が追いつけない状況は避け、段階を踏んで一歩ずつ進めていかなくてはならないという。

「働き方デザインを実行するのは現場の若い世代。自分は旗振り役として、言い続けることが大事だと考えています」

保元は、組織に合った休暇のアイデアを温めている。

「今考えているのは『マイゴールデンウィーク』ですね」

お盆や年末など繁忙期ではなく、閑散期に長期休暇を取れる、オンワード独自の休暇制度を2020年度から本格的にスタートさせようとしている。休暇の分散化は一般企業では普及しているところもあるが、繁忙期が他業種よりも多いアパレル業界では画期的な取り組みと言えよう。

休暇を楽しむことで、新しい発想が生まれる。雑事に追われ、クリエイティビティに欠ける画一的な商品が出来上がるより、しっかり休んでリフレッシュし、新たなインプットを得る。それによって作業の質をより高め、いい商品が生まれることを期待している。

「隗より始めよ」とばかり、まずは保元自らが長期休暇を取るという。社長が率先してマイゴールデンウィークを取得することにより、社員全員が長期休暇を取得しやすい雰囲気作りをする狙いがある。

海外でファッション産業が盛んな国でも、長期休暇は当たり前だ。フランスのパリや、イタリアのミラノでは、バカンスの8月になると2週間〜1カ月間店が休みになり、街が閑散とすることも多い。保元のアイデアは、海外のアパレル業界と肩を並べる上でも、実は必要な戦略と言えるのかもしれない。

保元はオンワードに入社する前、通産省(現・経済産業省)の官僚として月300時間の残業をこなし、忙しい時期は省内で新聞紙に包まって仮眠を取っていたという。「がむしゃらな仕事人間でしたね」と、保元は振り返る。

当時の自分が仕事人間だったという自覚はあまりなかったが、子供が大きくなった今、妻からは子育てで忙しかった時代の苦労話を聞かされるという。

「妻に苦労をかけたと今さらながら気づかされました。だからこそ、若い世代の人たちには、子育てや自分の時間をゆったりとってほしいですね」

マイゴールデンウィークが実現したら何をしたいか聞くと、妻と相談して旅行をしてみたい、と保元は笑みを浮かべた。若い時代に仕事ばかりで家庭を二の次にしてきたからこそ、もしまとまった休みが取れたら、まず何よりも妻の希望を叶えてあげたいと話す。

自分ががむしゃらに働いていた昭和の時代、そして平成の30年を経て思うのは、休みを返上して一心不乱に働くスタイルはもはや過去のものだ、ということ。保元は、仕事もプライベートな時間も楽しんで新しい発想を生み出してもらう、そして働き方デザインも楽しんで取り組んでもらうことが大切だと考える。だから、クリエイティブな会社ならではの柔軟な発想、取り組みの実現を期待している。

働き方をリデザインし、新たに作り直す。社員一人ひとりにふさわしい働き方を模索することで、休みの過ごし方も新たにデザインされる。これもクリエイティブな作業の一つだと保元は強調する。

現実には、商品を販売している百貨店やショッピングセンターの営業時間などの兼ね合いもあり、社内だけで「働き方デザイン」を完結させることは難しい。だが、老舗のアパレルが本気で取り組むことで、業界全体への波及も期待される。

「ネット社会が発展した今だからこそできる働き方デザインもある。イノベイティブな発想、流通の戦略、取引先との関係、顧客の利便性など、まだまだ進化の余地はあると思います」

オンワードの働き方デザインはどこまで実現するのか。今後の成り行きに注目したい。


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