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「何百万人というお客様に、1個100円あまりのパンを買っていただいている。多くの人の生活を支えるという意味で、私たちの会社は『社会』そのものという自負があります。だから、社会が変わったら、私たちも変わらないといけません」

愛知県名古屋市に本社を構える敷島製パン(Pasco)。日本国内の製パン業界第2位のシェアを占め、「超熟」シリーズで知られるパンの大手メーカーだ。代表取締役社長の盛田淳夫は、自分たちの会社こそ「社会の公器」の中核にいるのだと考える。


旧態依然のままでは取り残されてしまう

創業は1920(大正9)年で、まもなく100周年を迎える。歴史ある会社だが守りに入らず、国産小麦のパンや低糖質の菓子パンなど、常に時代のニーズに応える新商品を提供する。

常に社会の変化に向き合わなければならず、背中を向けていては存続できない。「会社に何を期待しているかを知り、そしてその期待に応える努力を怠らないようにしなければいけない」と、盛田は言う。

従業員も社会の一員であると捉え、昨今の働き方改革の波にもいち早く乗り、4000人の正社員、約2000人のパートナー社員、さらにその家族のための改革を進めている。

2016年、人事部にダイバーシティ推進室を新設。労働人口の減少、そして育児・介護などを行いながら働く社員が増加する社会の実情をふまえ、社内の意識変革や働き方改革、制度・職場環境の整備などに取り組む専門の部署となる。「従業員一人ひとりがいきいきと働き、会社と共に成長する」を目標に掲げ、仕事と育児・介護を両立させるサポートを、会社として積極的に取り組んでいる。

ダイバーシティ推進室のミッションを、盛田はこう語る。

「育児や介護は従業員一人一人にとって差し迫った問題です。特に介護はある日突然やってきて、長期間会社を離脱することになります。一昔前なら、育児や介護のために会社を辞めざるをえないケースもありましたが、その結果、会社が貴重な人材を失うことにもなり、本人にとっても会社にとっても不幸となる。だからこそ、会社が育児や介護をサポートするのは、今の時代では当然の流れなのです」

社員が長期の休暇をとっても気兼ねなく復帰し、働き働ける環境を作ることは、会社が持続的に成長するために必要不可欠だ。才能ある人材の離職を防ぐことにもつながる。また女性の社会進出という社会の流れにあわせて、男性も積極的に育児に参加できる体制を整える必要がある。そのための仕事の仕組みの改善として、たとえ誰かが休んでも情報共有と作業の分担化を徹底し、本人も職場も支障のない体制を整えていく。もちろん、休暇を取りやすい雰囲気づくりも重要だ。

敷島製パンでは、数十年前まで女性が結婚、出産をきっかけに退職するのはごく当たり前だった。そして、男性が家庭の事情で休暇を取りづらい雰囲気だったという。しかし、盛田が1998年に社長に就任した際、会社の存続に向けて大きな決断をする。パートナー社員を含む、社員の働き方に関して大きな改革に着手したのだ。

きっかけは、その当時発生した、ある食品メーカーによる食中毒事件のニュースだった。「同じ食品製造業として、社会と向き合っていない会社に存続はない」。旧態依然のままでは取り残されてしまう危機感を肌で感じた盛田は、社員が働きやすい環境づくり、そしてそのための仕組み作りへと舵を切る。

社会の変化に対応し、柔軟な働き方への選択肢拡充を目指す中、出産や育児、介護をしながら働く社員の両立支援制度の整備を進めた。2015年には育児や介護、通院などを目的とした休暇の所得単位を1時間単位に改定。2016年には、法定基準が3歳未満となっている「短時間勤務制度」の期間を、子供が小学校6年生終了時までに延長した。また、出産を控えている女性従業員を対象に「産休・育休復帰支援面談」をスタートし、本人の不安を解消するとともに、復帰しやすい環境づくりを進めている。2018年には事業所内に保育所を設置した。
 

事業所内保育所「Pascoかりや保育園」の園庭

また、産休・育休中の社員のために、専用サイト「Pasco すくすくネット」を開設。各エリアの両立支援担当者と対象社員のコミュニケーションツールとして活用し、長期にわたる休業期間中の会社情報の発信や、育児への不安などの相談の場としても利用している。全社を挙げて、より充実した子育て支援、スムーズな職場復帰の実現に向けサポートしている。


産休・育休中の社員専用サイト「Pasco すくすくネット」の利用者の声(CSR報告書2019より抜粋)

育児や介護に関する休業・休暇は男女問わず積極的な取得を推奨している。「仕事と育児の両立サポート読本」、「仕事と介護の両立サポート読本」を作成し、制度の内容や事前の心構え、受けられる行政のサービスなどを社員が容易に理解できるように工夫を凝らした。今年度には「仕事と育児の両立サポート読本」に男性版のページも追加される予定だ。

時間をかけて「あるべき理想の姿」に

様々な両立支援制度の整備・拡充変革を行なった結果、育児休業の所得者数は、少しずつ増加している。2012年には男性0人・女性25人だったのに対し、2016年には男性3人・女性47人、2019年には男性5人・女性42人となった。育児に関する短時間勤務制度利用者も、2012年の44人から2019年の140人へと大幅に上昇している(男女総数)。両立支援制度が拡充されていることはもちろん、子育て、介護に対し社内が寛容になってきたことも挙げられるだろう。

2019年には名古屋市よりワーク・ライフ・バランスの取り組みについて一定以上の基準を満たす企業として「ワーク・ライフ・バランス推進企業」の認証を受けた。

しかし、理想とする形にはまだ志半ばだと、盛田も認める。その理由の一つが、大企業ならではの、多岐にわたる業務形態だ。工場は受注生産を行っているため、前日の午後にならないと翌日作る量が決まらない。そのため受注数によって工場で勤務している社員の勤務状況が大きく左右されやすい。また、営業部門や間接部門にも多様な勤務体系があり、一律のやり方で働き方改革を行っては会社全体には浸透しない。現場が中心となって時間をかけて「あるべき理想の姿」に持っていくことが求められる。

また、社内には昔ながらの古い考え方や職場風土がまだまだ残っている。部署によってはいまだに休暇を申請しにくく、「人事が取得を推進しても現場はまだまだ」という、理想と現実とのギャップが課題として残っている。

「男性社員の中で育児休業を取りたい人がたくさんいたとしても、まだ取りにくい雰囲気が残っている。若い世代は取りたいのに、上の世代には戸惑いがあるのが現実です。次世代に向けて、認識を変えていくのには時間がかかる。今まさに変化の過程といったところですね」と、盛田は語る。

だからといって、手をこまねいているわけではない。今後は、どの部署でも残業の削減、そして男女に関わらず育児や介護のための休業・休暇をさらに取りやすくする社内のしくみ作りや雰囲気作りに向けて邁進している。

「社員の認識を変えていくのには社長自ら繰り返し言い続け、社会の期待に応える働き方を定着させることが今後も必要だ」と、盛田は語る。

「突き詰めていくと、会社の創業理念に戻るんですよ」と盛田。創業者でもある曽祖父が残した「金儲けは結果であり、目的ではない。食糧難の解決が開業の第一の意義であり、事業は社会に貢献するところがあればこそ発展する」──この言葉が敷島製パン流の「働き方改革」の軸足になっているという。

「社会貢献をした結果、利益はついてくる。時代、時代に沿った働き方に変えていくことで、社会とともに生きていけるのが会社です。弊社は100年という歴史がありますが、伝統というのは、ずっと同じことを続けた結果ではありません。時代に沿ったいろいろな改善改革に取り組んだ末に、振り向けば伝統がある、というものだと思っています。これからも、時代に合わせた働き方改革を続けていきたいですね」



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がむしゃらに働き、家庭をかえりみない…。そんな働き方はもう時代遅れだ。7社の名だたる企業のトップが宣言した「男性育休100%」。パートナーや子供と「#もっと一緒にいたかった」という後悔と誠実に向き合いながら、次世代のビジネスリーダーにその熱い思いを届ける。

Promoted by 敷島製パン(Pasco) text by Rikako Ishizawa photos by Ryoji Fukuoka(Gekko)

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