Fighting Pseudoscience


見落とした数は不明

アップルウォッチはどのように心拍の異常を見つけているか。アップルウォッチの背面には、光を検出する複数のセンサー(フォトダイオード)のほか、緑色LEDライトと赤外線LEDが内蔵されている。アップルのウェブサイトではこう説明されている。

「Apple Watchは毎秒数百回LEDライトを点滅させ、心臓が1分間に鼓動を打つ回数、すなわち心拍数を計測します」

これが可能なのは、皮膚がある程度、透けて見えるようになっているからだ。あえて言うまでもないが、皮膚の下に通う血管の一部は目でも見える。アップルウォッチは血流の計測に加えて、背面と、側面の「デジタルクラウン」と呼ぶ小さなダイヤルに内蔵されている電極を用いて、電気信号の測定もできる。再びアップルの説明を参照しよう。

「Digital Crownに指を載せると、心臓から両手を通る回路が閉じ、胸に流れる電子パルスが記録されます」

言い換えると、アップルウォッチは腕時計型の心電図モニターのように機能するということだ。アップルによれば、将来は心臓モニターの役割も果たし、一段の効果が見込まれるという。

もっとも、アップルウォッチが万全かと言うと、そういうわけでもない。一つには、アップルウォッチが心房細動を見落としていた数が不明だという問題がある。今回の調査では、不整脈が報告されたのは被験者全体のわずか0.5%にすぎなかったわけだが、残りの99.5%のうち、実際には不整脈があったのにアップルウォッチが検出しなかった人が何人いたのかは分からない。論文の著者たちも、この点(専門用語では「感度」と呼ぶ)については測ろうとしなかったと断っていて、こう強調している。

「脈の乱れについての通知が(アップルウォッチから)なかったということは、不整脈があった可能性を排除するものではない」

もう一つ留意しておくべき点は、今回の研究はアップルから資金支援を受けて実施されたものだということだ。研究を率いたのはスタンフォード大学のチームで、ほかにも一流の大学や研究機関の研究者が参加している。アップルからの助成については、論文の中で開示されている。

その一方で、アップルウォッチが心拍計として、ほかのどの装置よりもはるかに使いやすいのも事実だろう。不整脈を訴える患者は普通、心拍計を1度につき数日間ないし数週間つける必要がある。その間、体の6カ所に電極をテープで貼りつけ、それらをケーブルで装置(普通は携帯電話)に接続し、そこで記録したデータがモニター会社に送られるようにしなくてはいけない。こうしたモニター方法は費用も高額で、アップルウォッチの価格よりもずっと高い。

こう考えると、まだ不十分な点もあるとはいえ、アップルウォッチは、軽量で、身につけてわずらわしくない健康モニター機器の先駆けと言えるかもしれない。いずれにせよ、その性能はどんどん向上してきている。

編集=江戸伸禎

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