メキシコシティに「リトル・トーキョー」 広がる日本の食と文化

亀山社中=2019年11月、メキシコシティ (ファビオラさん提供)

成田空港からノンストップで約12時間。標高2000メートルに位置するメキシコシティに「リトル・トーキョー」が生まれつつあるという。10月下旬、米紙ニューヨーク・タイムズが特集記事を出した。

リトル・トーキョーといえばロサンゼルスが有名だ。またブラジル・サンパウロの「リベルダージ」もよく知られている。両地区は1900年ごろ、日系移民1世の生活とともに形づくられていった。それから100年以上が過ぎたいま、メキシコシティで何が起きているのだろうか。

日本にゆかりある若手事業家の活躍

ニューヨーク・タイムズによると、メキシコシティに「リトル・トーキョー」が生まれた背景には、日本にゆかりのある若手実業家たちの活躍があるという。

また筆者が独自に取材を進めていくと、日本で私たちが外国の食事を楽しむようになったのと同じ理由で、日本食や日本風の料理を楽しもうとするメキシコの人々のライフスタイルも見えてきた。さらに、食に関連して他分野でも日本のモノが人気を集めていることが分かった。

新鮮な刺身や寿司を楽しめる「ROKAI(炉海 ろかい)」は、いまメキシコシティで日本食の話をすると必ずと言っていいほど耳にするレストランだ。経営するのはエド・コバヤシ・グループ。実業家のエド・ロペスさんが代表を務めている。エド・ロペスさんは家族のルーツが日本にある。「コバヤシ」は祖父の姓だ。

ROKAIは2013年にオープンした。18年には創作日本料理の「Emilia(エミリア)」と、「Tokyo Music Bar(トーキョー・ミュージック・バー)」も開店。Tokyo Music Barではこだわりの音楽が聴けるという。

Tokyo Music Barの利用客、デザイナーのマティアスさんは、「こじんまりとした高級感のあるバーで、豊かなカクテルとアナログ感を楽しみました。ウィスキーをめぐる日本の人々の愛情とメキシコならではの素材、お酒がうまく融合している」と感想を語った。


トーキョー・ミュージック・バー=2019年11月、メキシコシティ (Nahevy EP 提供)

「超人気の居酒屋で現地の客も多い」とメキシコで暮らす日本人から評判が聞こえてくるのは、「MOG Bistro(モグ・ビストロ)」だ。

月に1、2回は通うというというモンセさんは、「前菜のお気に入りは枝豆です。寒い季節にはタンメンもおいしい。料理と店の雰囲気に加え価格にも満足しています」と話す。「ドラゴンロールやパッタイも好き」で、「メキシコにもタコスなど世界的なソウルフードがあるが、時々気分を変えたいときは日本食を挟む」そうだ。MOGでは正月に合わせておせち料理の予約も受けつけている。
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文・写真=李 真煕

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