ビジネス

2019.12.17

移住を促す民間の仕組み、千葉県金谷で始まった「いなフリ」の今

「田舎フリーランス養成講座」の様子


「いなフリ」の1カ月間の合宿では、受講者それぞれにメンターがつき、今後のキャリアについても相談できるようになっている。

場所を問わずに働けるスキルを身につけ、合宿を通じて信頼できるコミュニティができる。金谷は生活コストも安いため、そのまま住みながら仕事をするという流れも生まれるというわけだ。

「1カ月間の合宿で、みんな仲良くなるし、地域に愛着も生まれるんです。そのまま住み続けたいという要望が多くて、自ら不動産経営もするようになりました。金谷は環境としても、コミュニティとしても、居心地をよく感じてくれる人が多くて、最近では受講者以外でも滞在する人や移住者が増えてきました」



こう語る山口さんだが、実は筆者も定期的に金谷には出かけているのだが、いつも第二の故郷を訪れたような感覚になる。そういう意味では、筆者もいわば金谷の「関係人口」の1人といえるかもしれない。

移住のハードルを下げる第一歩

地方の公共団体が主催する移住セミナーに招かれ登壇すると、参加者から多くの質問を受ける。大部分は、現地での仕事に関しての質問だ。

地域に自分のやりたい仕事があるのかどうかわからない。かといって、いまの仕事があるので、現地の仕事を試してみることも難しいという。もちろん、地域コミュニティに馴染めるかどうかにも不安があるのだろう。

その点「いなフリ」では、そもそも自分の力で、場所を問わず、どこでも稼げるフリーランスのスキルを身につけるという前提なので、職に関する心配は少ない。さらに、1カ月間、寝食をともにした仲間もいる。移住するための第1歩としては、最適な環境といえるかもしれない。

「いなフリ」は、現在、少しずつ開催拠点を増やしている。現地のコワーキングスペースや自治体などと連携し、2019年には、山梨県都留市や愛媛県大洲市など、全国7会場で開講されている。

一瞬の消費で終わってしまうプロモーションやイベントへの出展などに予算を使うのではなく、「いなフリ」のように持続的で、地に足が着いた仕組みを導入していくことが、今後の地方創生には必要なのではないだろうか。

連載:地方創生のキーマン
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文=小幡和輝 写真提供=田舎フリーランス養成講座

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