その延長で、最近では「関係人口」という言葉も耳にする機会が多い。「関係人口」とは、移住した「定住人口」でもなく、観光に来た「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指し、こうした地域外の人材が地域づくりの担い手となることも期待されている。そのため、移住促進や関係人口の創出に、自治体の多額の予算があてられている。
そんななか、自治体によるものではなく、民間の事業として、移住促進に取り組んでいる起業家がいる。
スキルを身につけ、そのまま移住する
「田舎フリーランス養成講座」(以下、いなフリ)という合宿型の教育プログラムを、千葉県富津市の金谷地域から事業展開している山口拓也さん(30歳)だ。
「いなフリ」は、1カ月間田舎に滞在して、その間みっちりとWEBに関する講座を受講して、サイト制作やライティングなどのスキルを身につけるというもの。「人生の選択肢を広げる」というコンセプトで運営されており、参加した受講者は、フリーランスワーカーとして、場所や時間を選ばず働く道を選択する人間も多い。参加費16万円と高額ながらも、2016年のスタート以来、講座は常に満席だという。
この講座の大きな特徴は、1カ月の合宿講座によって、受講生がそのまま開催地域に移住する導線をつくっていること。それにより、例えば人口1000人ほどの金谷地区には、延べ100人以上が移住を果たしている。
また「いなフリ」では、民間事業として講座を企画・運営する他に、空き家をシェアハウスとして移住者に貸し出す不動産事業も行い、地域への「移住」をビジネスとしても回している。
山口さん自身も、すでに金谷地区でシェアハウスを7軒運営しているが、最近では移住者が急増した結果、空き家が足らなくなり、新築のアパートを建築することにしたという。
「いなフリ」を設立した山口さんは、早稲田大学を卒業後、都内のベンチャー企業に勤めたあと、2012年に独立。働く拠点を探していたところで、たまたま大学時代の知人がいた富津市金谷地区へと足を運んだ。
東京から約1時間半、海も近く、自然に恵まれた金谷で、サイト制作、メディア運用などを行うフリーランスとして3年間ほど活動するなかで、地域でともに働く仲間をつくろうと、「いなフリ」をスタートさせた。