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(左)赤生悠馬氏(右)菊池諒氏

日本全国40拠点のWeWorkで競ったピッチコンテスト「Let’s make it happen 2019」。優勝の栄冠を勝ち取った「ZeBrand」のビジネスモデルを紹介する。


主戦場はアメリカ。そう決めていたブランディング支援サービスを展開する「ZeBrand」が、国内ピッチコンテスト「Let’s make it happen 2019」に参加し、優勝まで勝ち取ることになるとは、誰が予想しただろうか。むしろいちばん意外に思ったのは、創設者の菊池諒だったかもしれない。

イノベーションはひとりの力で実現できるものではない

「2024年に創業100周年を迎える老舗フォントベンダーのモリサワ。国内ではデファクトスタンダードでも、海外ではそうはいかない。そこで私は海外で新規事業を開拓する社内スタートアップとして活動していました。だから国内、しかも日本語でピッチすることなど、考えてもいなかったのです」(菊池)

国内拠点はWeWork丸の内北口。そこはコミュニティ型ワークスペースとして機能しており、ZeBrandもさまざまな恩恵を受けていたと、共同創設者の赤生悠馬は言う。


ZeBrandのメンバー。メンバーが共有する5つのコアバリューは、「We add value」「We are one family」「We have fun」「We learn from failure」「We keep growing」だ。

「多様な交流を生んでくれたWeWorkに、私たちにぴったりのコンテストがあると薦められました。その褒賞は、表紙掲載を目標としていたForbes JAPAN誌への掲載権。主催は海外出張でいつも使っているアメックス─」。

これは何かの運命だと感じた彼らは、参加を決めた。もちろん目指すは優勝しかない。これは組織としてのチーム力の闘いになると本能的に感じとった全メンバーは、WeWorkのコミュニティから支援者を集めるためにさまざまなネットワーキングや事業の紹介を行ったという。

「その日から周囲は志を同じくするライバル。しかしライバルたちは一度ZeBrandのビジョンやピッチ内容を認めると、海外の有識者を紹介してくれたりとファンや協力者に変わるのです。ひとりの力ではできないイノベーションはこうして生まれていくんだと確信しましたね」(菊池)

誰もがブランディングを行える時代

「モリサワは世界戦略を見直す時期にあり、私はニューヨークのWeWorkに拠点を構え2カ月間の調査に赴きました。そこでわかったのは、フォントビジネスだけではグローバルな未来は見えてこないということ。確かにAirbnbやUberのようにブランディングに力を入れている企業の多くは、フォントをブランドの重要な要素として捉えており、オリジナルのフォントを規定するケースが増えています。ただ、それには専門家のスキルを要するので、規定してない企業もまだ多くあります。そういった企業に対してフォントの提案をすれば商売になりますが、それでは従来通りのフォントベンダーです。しかし米国で美大のハーバードと呼ばれるRhode Island School of Designで学んでいたとき、フォントはそもそも文字であり、その価値はもっと大きなものだと気づいたのです」(菊池)

卒業生の多くが就職するブランディングエージェンシーでは、数億円の予算と数年間をかけ大掛かりなブランディングを行う。しかしそれだけの予算と時間を掛けられるのは大企業だけだ。

「ニューヨークにもたくさんのスタートアップが存在します。ただブランディングを考えられるのは資金が集まるシリーズB以降。でももしそれが、事業の初期段階のシード期やシリーズAから使えたら?それは世界を大きく変えられるのでは?」(菊池) 

“誰しもがブランディングできる世界”が菊池の脳裏に浮かんだ瞬間だった。

AI、独自のアルゴリズムを駆使して

ZeBrandはブランディングをオートメーション化するWebサービス。

最適なブランディングを自動で行う「ZeBrandを利用すれば、簡単な質問に答えるだけで、各企業向けに最適化されたミッション、コアバリュー、フォント・フォトグラフィー・ロゴを含むブランディングに必須なツールキットが、わずか5分で自動生成されます」(赤生)

2月にフリーミアムでスタートし、わずか半年で全世界で2万3,000ユーザーを超えた。利用者は小規模事業者から個人事業主までさまざま。予算・時間の制約を取り払えば、これだけの企業がブランディングを欲していたのだ。

「わかりやすいのは、ツールキットで各企業に最適化されたプレゼンテーションのテンプレートをアセットとして入手できるので、その分の時間をプロダクト開発など本当に優先すべきことに充てることができるというメリット。でもZeBrandが提供できる価値はそれだけではありません。利用時の質問では必ず、ビジョン・ミッション、コアバリューを伺います。ZeBrandのブランディングはここから始まるからです。米国ZapposやIDEOなど、従業員の働きがいを重視した優良企業が特に重視しているのが、それらの要素。つまりZeBrandはブランディングに必要なアセットと同時に組織を正しく機能させるツールでもあるのです」(菊池)

これがZeBrandのイノベーションだ。誰もがブランディングできればよりよい世界が生まれる。なぜならブランディングは企業ならカルチャーであり、個人なら個性だからだ。ZeBrandメンバーも個性派揃いだが、コアバリューを共有することでホラクラシーな組織を実現している。

収益モデルがサブスクリプションなのは「常に企業は成長し、変化していくため。ブランディングもそれに合わせて進化していく必要があるからです」(赤生)。

「今後ローンチしていく新バージョンでは、さらなるこだわりを実現するためのブランディングに必要な有償のアセットや、企業の成長段階に合わせたブランディングエージェンシーやデザイナーを紹介する機能まで実装する予定です。つまりZeBrand活用後の道筋まで示すことができるのです。従来のエージェンシーなどと競合するのではなく、ブランディングを経験したことのない新たな層へ価値を届け、ともにブランディング自体の価値を上げていく、これこそ誰もが笑顔になれる新たなエコシステムなのではないでしょうか」(菊池)

ZeBrand
https://zebranding.com


赤生悠馬◎ZeBrand Co-founder兼SalesDirector。フォントベンダーのモリサワに入社後、アプリのセールスを経て、イノベーションチームの立ち上げに参画。ZeBrandでは海外へのセールスを主に担当し活動中。

菊池諒◎ZeBrand Founder兼CEO。2008年モリサワ入社。12年米国の美術大学Rhode Island School of Designに留学後、MBA取得。シリアルイントレプレナーとしてZeBrandをスピンオフし、米国を中心に事業を展開。

そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス

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アメックスがスタートアップを“Powerful Backing” 新たなピッチ・コンテストが生み出すイノベーションとは

Promoted by アメリカン・エキスプレス / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shuji Goto / edit by Akio Takashiro

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