進捗状況47%──仙台防災枠組からみるSDGsマネジメントの限界

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進捗率47%が意味すること

仙台防災枠組の実装を加速させる国際組織は2つある。1つは日本がリードする世界防災フォーラム、もう1つはEUなどがリードするグローバルプラットフォーラムだ。双方ともに、地域特性を踏まえながら、UNDPや世界銀行などさまざまな国際機関と連携しながら活動をしてきた。

それらの国際会議で提示された数字が、冒頭に掲げた47%だった。著者は、評議員として第2回世界防災フォーラムに参画していたが、その半年前の第4回グローバルプラットフォーラムの参加者からも同様の数字の報告が届いていた。

2015年に国連から号令がかかり、2017年には193カ国の約25%にあたる47の加盟国が防災戦略計画を策定、そして2019年時点では91カ国47%という進捗状況を踏まえ、あと1年でどこまで伸びるのか、関係者は危惧していた。

すなわち、SDGsの目標達成が現実的ではないと関係者の間では議論され始めているのだ。ただ、まだ方向転換を協議するフェーズでもないとの意見が大勢だった。

見えてきたSDGsマネジメントの限界

組織や社会のマネジメントでKPIやターゲット指標を設けることは、半ばブームでもある。しかし、それによる弊害も散見されており、SDGsの進捗管理やマネジメントにおいても、3つの課題が浮き彫りになった。

まず、すべての防災戦略計画が同等に作成されるわけではない点がある。仙台防災枠組に準拠した防災計画を策定している国や地域もあるが、それとは無関係に策定しているところが実は多いことが明らかになった。

仙台防災枠組では、罹災後の対応計画のみならず、予防対策、リスクを低減するための防災戦略が提示されているが、ほとんどの計画が前者のみを主眼とした内容となっている。世界共通の課題に対し、国連が提示した枠組とは異なる計画が策定されている状況を踏まえるに、何のためのSDGsなのかの根本も問われてくる。

次に、アジェンダのミスマッチだ。気候変動リスク(移行リスク、物理リスク)の脅威が急増するなか、CO2削減、カーボンニュートラルへの対策は、パリ協定の守備範囲で進められている。ここでいう気候変動対策は「移行リスク」が主だ。

一方、水の過剰利用に伴う干ばつや、脆弱な治水対策による洪水被害の拡大、激甚化する風水害や熱波災害、さらには将来の海面上昇リスクなどは、仙台防災枠組の守備範囲となる。こちらは「物理リスク」となる。

本来であれば、これらは統合されるべきアジェンダだが、そうはなっていない。前述したように、パリ協定とSDGsは知っているが、仙台防災枠組が知られていることはまずないことからも、気候変動対策=パリ協定という認識だろう。

国際レベルでは、ようやく統合化に向けた議論が始まり、UNDRR(国連国際防災戦略事務局)では、仙台防災枠組をベースに、気候変動対策(物理リスク)を組み込むという動きも出てきた。
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文=蛭間芳樹

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