放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。

放送作家・脚本家の小山薫堂が「有意義なお金の使い方」を妄想する連載第52回。『世界遺産』の構成台本を書くようになって興味を持ち始めた建築の世界。中でも陶芸家・辻村史朗の自宅と茶室には近年でいちばん心を揺さぶられ……。


今年6月、熊本・天草市役所の新庁舎がお目見えした。

天草は僕の故郷であり、市役所で「小山ゼミ」を開催している関係もあって、実は建て替え前に建設会社から「何かアイデアはありますか」と一度ヒアリングされたことがあった。そのときに思い出したのが、北欧かどこかの国会議事堂の議場が地下にあるという話。つまり議場の上を市民が行き交うわけで、「議員は国民の公僕である」という関係性が建物のデザインに反映されているのだ。そこで「市議会本会議場を地下に置き、ガラスの天井とする(市民の視線を感じる)」「会議が行われない場合は議場を憩いの場として市民に開放する」などいくつかのアイデアを伝えたのだが、思いつきに等しいと思われたからか、あいにくひとつも採用されなかった(笑)。

公共建築はつくり方によって本当に面白くなると思う。例えば佐賀県の武雄市図書館。「ツタヤ図書館」第1号として2013年4月に開館し、初年度の来館者数は54万人、18年度は100万人を突破した。その間に選書問題などで批判もあったけれど、資料収蔵や図書貸出の場といった従来の図書館像にしばられず、図書館、書店、カフェを融合することで、全国の自治体に「図書館の新しいあり方」を考えさせたことは、非常に有意義だったのではないだろうか。

日本社会は公共建築に対して「箱物だ」「税金の無駄使いだ」「ゼネコンや選挙のためにやっているんだろう」という厳しい意見が多い。それを受け、建築家の隈研吾さんは東西アスファルト事業協同組合講演会の質疑応答で、「長期的な視点で都市や建築について考える人が少ないのは、社会にとって大きな損失である」「守りに入り受け身をとっている社会は、非常に弱く魅力がないと思う」と述べている。僕もまったく同意見で、意欲的な建築家が考えに考え抜いて建てる公共建築には、社会を活性化する“未来”が備わっていると思う。

イラストレーション=サイトウユウスケ

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