放送作家・脚本家、「くまモン」の生みの親。


まず、ご自宅は辻村さんが廃材などをかき集めて自ら建てたものだった。居間の中央には囲炉裏が据えられ、辻村さんが野菜や肉などを焼き、山で採ってきた山菜を天ぷらにしてくれた。ご本人が焼かれた湯のみのようなワイングラスでワインも飲んだ。茶室も辻村さんの手によるもので、自ら焼いた茶器があり、自ら書いた軸があり、自らつくった花器があって、山で摘んだ野草が生けてあった。おもてなしとはかくあるべし、という時間と空間だった。以来、懇意となり、僕が主人を務める京都・下鴨茶寮のお茶碗も焼いてもらっている。

そんな辻村さんの作品だが、ファンは日本にとどまらず、アラブの王侯貴族がプライベートジェットで購入しにくることもあるらしい。なぜみなそれほどまでに惚れ込んでしまうのか。それは純粋な生き方が映し出されているからだと僕は思う。孤高の書家・井上有一が「貧」という字だけを書き続けるがごとく、辻村さんの作品にも人生観がそのまま表れているのだ。とても僕みたいなヒヨッコじゃ真似できない。だからこそ憧れるわけだが。

最後に僕が案内人として関わっている「空想科学『かいじゅうのすみか』体感エンターテイメント」を紹介したい。東京ドームシティ Gallery AaMoで11月7日〜来年1月26日まで開催されるイベントで、特撮と最新デジタル技術を駆使して、円谷プロのさまざまな作品から誕生した「かいじゅう」たちの生態を再現した。例えばナノレベルの霧に映像を投射したり、ARで青い蝶が幻想的に舞ったり、ロボトニクスとプロジェクションマッピングによる映像テクノロジーでお馴染みの怪獣が出現したりと、大人も子どもも同時に楽しめるエンタメとなっている。

いまの日本社会に最も必要なのは、自分の価値観や主張と異なるものにも耳を傾け、マイノリティを個性と捉える「多様性」だと思う。怪獣の魅力を探ることは、多様性を理解することに似てはいないだろうか? 建築とは多くの人を集め、心を変化させることも可能だと書いたが、このイベントが新しい価値観を創造する旅となってくれたら、本当に嬉しいです。

イラストレーション=サイトウユウスケ

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