「ナースを守る非常ボタン」で病院を変えるスタートアップ

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医療従事者が職場で暴力を受ける割合は、他の民間産業の4倍だと米労働安全衛生局(OSHA)は指摘する。フィラデルフィアにあるトーマス・ジェファーソン大学病院でセキュリティ・オペレーションを担当するJoe Byhamも、この問題を認識している。

特に看護師が暴力に遭うケースが多いが、他の病院と同様にこの大学病院でも緊急ボタンがナースステーションに設置されているだけだった。だが、暴力を受けているときにナースステーションまでボタンを押しに行くことは不可能に近い。

そこでByhamと看護師のDenise Shapiroらはスタートアップ企業「Strongline」と共同で、看護師が名札に付ける約2.5センチ角のバッジを開発した。バッジのボタンが押されると低消費電力のBluetoothで壁に設置された小さなポートに信号が送られ、緊急事態が発生した場所を警備員に伝えるという仕組みだ。

さらに、近くにいる従業員にテキストメッセージが送信されるため、現場レベルで迅速な情報共有が可能になる。Stronglineはソフトウェア企業Collateral Opportunitiesから独立した会社だ。

Collateral Opportunitiesは以前から医師の場所を特定するデバイスを開発しており、2年前からトーマス・ジェファーソン大学病院との取り組みを開始した。同社の共同創業者のJustin GreenがこのデバイスをByhamに見せたところ、「警備員を呼ぶボタンに改造できないか」という話が持ち上がり、バッジが誕生したという。

この大学病院で働く人々はバッジを気に入っている。「従業員の安全を守るシンプルで目立たない解決策をもたらしてくれた」とJefferson HealthのCEOのStephen Klaskoは話す。今後数年で14の系列病院がこのバッジを導入する予定で、Stronglineとの間に年間250万ドルの契約を交わしているという。

Stronglineのバッジには他の病院からも問い合わせが来ており、コロラド小児病院やチャールストン地域医療センターなど、複数の病院でテスト導入が進んでいる。「このバッジのおかげで、病院はもっと安全な場所になりそうだ」とGreenは語った。

編集=上田裕資

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