セールスフォースCEOが明かす、ビジネススクールでは学べないこと

セールスフォースCEO マーク・ベニオフ/Getty Images

マーク・ベニオフは1996年、オラクルでの幹部職を長期にわたり休み、インドとネパールを旅した。ベニオフは道中、新しい種類の会社とはどんなものになるかについて、考えをめぐらせた。

そして数年後、そのアイデアを基に、スタートアップ企業セールスフォース・ドットコムを立ち上げた。ベニオフの大胆なビジョンは、従来の企業向けソフトウエア市場をひっくり返すことだった。

ベニオフのソリューションは、アマゾン・ドット・コムやイーベイのように使いやすく、インストール用CDを使わずともブラウザからアクセスできるソフトで、料金プランも手頃だった。

だが他にも重要な点があった。それは、価値観へのフォーカスで、信頼や顧客の成功、革新が(そして後には平等も)重んじられた。これらは社会への還元(利益・製品・時間の1%を慈善活動に投じること)や、より崇高な目的へのコミットメントによって支えられた。

そして同社は言うまでもなく、巨大企業に成長した。セールスフォースの時価総額は1300億ドル(約14兆円)を超え、従業員は3万5000人、売上高は130億ドル(約1兆4000億円)以上だ。

ベニオフは新著「Trailblazer: The Power of Business as the Greatest Platform for Change(仮訳:先駆者 変化に向けた最大のプラットフォームとしてのビジネスの力)」で、この驚異的な旅について詳述している。そのメッセージはとても明確で、企業の価値観は成功に向けた「最も強い原動力」となる、というものだ。

ベニオフは同著で、セールスフォースが重きを置くことを一つ一つ取り上げ、力強いエピソードと共に紹介し、貴重な教訓を示している。以下にその一部を紹介する。

信頼

成長に執着すると、近道をしたくなる。そうなると最終的に、信頼が弱まる結果となる。これは企業を弱体化させ、時には破滅させすらする。

ベニオフはしばしば、この成長と信頼のジレンマに苦戦した。その一例が、サイト障害が起きた時のことだ。同社にとっては悪夢のような状況で、沈黙を保つか、言い訳をしたい衝動にかられた。

だがそうすると、信頼は生まれるだろうか? そんなはずはない。ベニオフは本能的に、別の方法が必要だと感じた。そのためチームにダッシュボードを作らせ、リアルタイムでのシステムパフォーマンス状況、メンテナンス計画など、サービスの主要な指標を提供した。完全な透明性を推進したことで、危機をポジティブなものに変え、顧客忠誠度を高められた。
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編集=遠藤宗生

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