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2019.12.15

航空史に残る大失敗 米航空の「生涯ファーストクラス乗り放題券」

Tupungato / Shutterstock.com


Aエアパス購入者らの搭乗頻度は、「フリークエントフライヤー」と呼ぶにはけた違いのレベルだった。中には、Aエアパスを1万回も利用した末に、生涯乗り放題だったはずの保有チケットがアメリカン航空によって無効とされた人もいた。

私は、この悪名高きAエアパスの購入者であるスティーブン・ロススタインを取材した。シカゴ出身の元投資銀行家であるロススタインは1週間に4回飛行機を利用し、アメリカン航空からAエアパスの購入を勧められたと語った。

「アメリカン航空からは、Aエアパスを債権のように考えていると言われた。私が同社に金を貸しているようなものだ。同社は金を必要としていた。そのため非常にお得な商品を提示したのだ」(ロススタイン)

信じられないAエアパス所有者の話は他にもある。ジャック・ブルームは年間200万マイル近く飛行機を利用し、友人とのランチのためだけにロンドンやパリに飛んだとも言われている。

しかし2007年、アメリカン航空が社内で損失を生んでいる事業を調査したところ、当然ながらAエアパスは20年以上にわたり利益を生んでいないことが分かった。アメリカン航空は、ブルームとロススタインが「不正行為」を行ったとして、2人の乗り放題パスを無効とした。

ロススタインは「私は、どうしても飛行機でどこかに行かなければいけない事情がある人に、よくマイルをあげた」と説明。「例えばシアトルにいる男性に、父親の葬式に出席するためチケットをあげたことがあるし、多くの人に病気の家族を見舞うためのチケットを与えた。私はこれを慈善活動ではなく、善行と考えている」と語った。

ロススタインは、自身のAエアパスが無効にされてからはアメリカン航空を利用しなくなったという。現在頻繁に利用する航空会社はユナイテッド航空だ。

編集=遠藤宗生

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