ビジネス

2019.12.19

マスよりも「次なる一人」 アシックスが地道な発信にこだわる理由 

アシックスジャパン取締役マーケティング統括部長 兼 マーケティングプランニング部長の甲田知子

利益向上、市場拡大、株価上昇と、目に見える成果を追い駆けることばかりが、必ずしも「正解」として求められることがなくなってきた昨今。これからの組織、そして私たち個人の在り方はどう変わっていくのだろうか?

そのヒントを探るべく、日本の酒蔵の多様性を継承することを目的に、ユニークな事業展開を進める「ナオライ」のメンバーが、これからの社会を創るキーパーソン、「醸し人」に迫る連続インタビュー。

第8回は、「スポーツでつちかった知的技術により、質の高いライフスタイルを創造する」というビジョンのもと、スポーツ用品を展開するアシックスジャパンの取締役マーケティング統括部長 兼 マーケティングプランニング部長である甲田知子さん。

同社初の女性役員に就任するなど、輝かしいキャリアを築き上げてきたと同時に、「役職者でありながも分け隔てなく接してくれて、親しみやすい」と多くの声が挙がるほど社内からの信頼も厚い。そんな甲田さんにアシックスの掲げる「健康経営」をはじめ、「幸せに働く秘訣」について話を聞いた。


──いろいろなスポーツがあるなかで、とくにランニングを好む人の特徴というのは何でしょうか?

もちろん、一概には言えませんが、ランニング好きには色々なことを頑張り抜く力のある方が多いように思います。タフな環境のもと走り続けることを通じて、精神と肉体が鍛えられるからです。世の中の第一線で活躍されている方にも、ランニング好きが多いイメージです。

実際、ランニングをするとカロリーは消費されますが、一方でエネルギーはチャージされるとも言われています。ランニングに関しては、競技性よりエネルギーチャージに重きを置く人が多い気がします。そして、蓄えられたエネルギーは、さまざまな場面で発散され役に立ちます。



──「エネルギーをチャージする」というのは興味深いですね。 勝ち負けにとらわれず、自分を磨くことに目的を置かれているということでしょうか。次世代における企業の在り方にも通じるものを感じます。

そうですね。例えば、企業は存続のために成果を上げ続ける必要があります。その側面は、競技になぞらえることができるかもしれません。

一方で、社員の幸せなしに企業の存続はあり得ません。だからこそ、利益の追求に留まることなく、成果が出ない時こそ、組織のメンバー1人ひとり、つまり内側に向き合いながら、現状の打開策を考えることが必要です。

──リーダーの立場から見て、社内で変革すべき点はどこにあると思われますか?

例えば、社内を見渡すと日本特有の奥ゆかしさというか、自己主張の少なさがやや目立ちます。しかし、1人ひとりとじっくり話をすると、彼や彼女たちの内なる能力や可能性に気がつくことがあるのです。

それらを拾い上げると同時に、個々のの「こう在りたい」と願う気持ちも引っ張りあげる。双方をケアできるリーダーシップが求められているのだろうと感じます。

管理職における女性数はまだまだ少ない状況です。ロールモデルがいない故に、上を目指したくとも不安が先に来てしまう人も少なくないはず。ですから、今は積極的な女性登用に向けて社内改革中です。今後はより多様性の感じられる組織へと変容させていくことを目指しています。
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監修=谷本有香 インタビュー=三宅紘一郎 校正=山花新菜 撮影=藤井さおり

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