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エディター、ライター

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今回は、東京・銀座に店舗を構える高級時計店「ザ アワーグラス」の社長、桃井 敦さんに登場いただいた。数多くの高級時計に触れてきたプロ中のプロ、桃井さんの経歴、そして、個人的に身につけている腕時計はとても興味深い。


30数年に及ぶ桃井さんのキャリアのスタートは、オーストラリアだった。

「20代半ばの頃でした。海外に出ようと思い立ち、当時、何のバックボーンもない僕にビザを発行してくれた唯一の国がオーストラリアだったんです。住んだのはゴールドコースト。現地でDFSが日本語を話せるスタッフを募集していて、たまたま配属されたのが時計売場でした」

1987年当時のゴールドコーストは日本人が大勢やってくる賑やかな場所で、DFSにも毎日数千の人がやってきた。桃井さんはここで実績をあげる。するとゴールドコーストに進出してきたシンガポールの高級時計販売店「ザ アワーグラス」から声がかかるのだ。

「シンガポール資本の高級店だということぐらいしか知らなかったのですが、二つ返事で決めました。それからもう31年です」

桃井さんは、年間約20億円という大きな売り上げを達成する。本人は「日本人スタッフは僕一人だったので、日本人観光客は自分が独り占めできる幸運な環境でした」と謙遜するが、商才がなければそんなに売れるわけがない。その証拠に、数年後にはシンガポールの本社に呼ばれる。

現在のザ アワーグラス ジャパンを設立したのは96年。当初はジェラルド・ジェンタとダニエル・ロートのディストリビューターをしていたが、2002年に売却。「僕の原点」である小売業に立ち返った。

高級ブランドの超高額機種を並べ、それを実際に手に取ることができたザ アワーグラスは、当時としては画期的なお店だった。さらに「社員を徹底的に教育した」ことによる時計の知識も大きなアドバンテージだった。だから、高級機種にも関わらず、当初からよく売れたという。

そんな桃井さんが所有する愛機のなかでも、現在もっともお気に入りなのがユリス・ナルダンである。

「2016年のアワーグラス ジャパン創立20周年を記念して作ってもらった、クラシックで格好いい時計です。文字盤はグラン・フー エナメルで、ドンツェ・カドランというトップアトリエに依頼。インデックスの色を替え、針をブレゲ針に、とディテールを変更しています。製作に約1年かかり20本作ったのですが、即完売でした」

着けたい時計は、何年か毎にマイブームがあるという。一通りのものは通過して、現在はシンプルな2針、3針ということだ。

4、5歳の頃に「時計が趣味だった」という父親に高級時計の薫陶を受けてから現在まで、その人生の大半を時計とともに歩んできた桃井さん。次のマイブームは何になるのだろうか。とても興味深い。

photographs by Kazuya Aoki | text by Ryoji Fukutome | edit by Tsuzumi Aoyama

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