テクノロジー

2019.12.14 11:30

「地球の使い過ぎ」の特効薬 バイオエコノミーの大いなる可能性

(c) Aivan Design Agency


幸福度の高さは誰もが知るところながら、男女格差の小ささにおいても、北欧諸国は世界ランキング上位を独占。対する日本は、149か国中110位という残念な結果です。(参照:Global Gender Gap Report2018)
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五十嵐氏の所属する研究所でも同じチームの7割は女性。バイオエコノミーという分野こそが、自分の居場所だと感じている女性が多いといいます。長期的かつ包括的な視点が必要なバイオエコノミーの実現に、次世代のことを考えられ、細部に気遣える女性の感性がアドバンテージになるのです。

セルロースを主原料としたパッケージ素材を手掛ける、フィンランドのバイオスタートアップ Woodly社CTO、マルッタ・アシカイネン氏は、こう語ります。

「私たちの使命は、生態学的に持続可能な未来への移行を加速すること。化石資源の使用は、次世代にとって持続可能な解決策ではありません。バイオエコノミーは、新しいスタンダードにならなければいけないのです。
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ブランドと消費者は、生産産業に大きな影響力を持っています。責任を持って使用または廃棄する方法について顧客に伝え、教育できるブランドは、末永いブランド価値を築いていくことができるでしょう」


600億ユーロの規模でバイオエコノミーを推進するフィンランドでは、女性リーダーたちが活躍している。Woodly社CTOのマルッタ氏もその一人。

幸せでなければバイオエコノミーは広がらない

女性たちが発言しにくい社会の風潮、余裕のない日本の労働環境が、どんどんサステナビリティやバイオエコノミーを遠ざけている。彼女らがのびのびと活躍できる環境があれば、いくらでも日本のバイオエコノミーは広がると五十嵐氏はいいます。

「バイオエコノミーは短期的に見れば、損をする仕組みです。つまり、バイオエコノミーに取り組むには、その一瞬の損が、自分たちが幸福に生きていくために必要だと思えるぐらいの余裕がないといけません。

満ち足りていて余裕がなければ、地球にまで目がいかない。日々の生活で精いっぱいな人たちが、どうして地球環境のことまで考えられるのでしょう? バイオエコノミーの1番の敵は、企業ではなく、それを受けとるプレイヤーである私たち地球市民の貧困です」

フィンランドだけでなくバイオエコノミーをリードする北欧諸国が、軒並み幸福度が高く、女性が生きやすく、彼女たちが中心となってバイオエコノミーを推進している。その事実を見た時に、五十嵐氏は確信したといいます。

「女性の社会進出と働き方改革を目指している今の日本が真似しない手はないですよね。それが、日本でバイオエコノミーを成功させる一番の近道だと思います」




五十嵐圭日子◎1971年山口県生まれ。東京大学大学院農学生命科学研究科で、きのこやかびなどの微生物の酵素を使った生物資源の研究を行う。フィンランドの研究機関の客員教授も兼任し“バイオエコノミー”の普及につとめる。平成27年度の日本学術振興会賞の受賞や酵素学研究のギネス世界記録も保持。

連載 : クリエイティブなライフスタイルの「種」
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文=佐藤祥子、国府田淳 取材協力=伊藤忠商事株式会社、エスポーマーケティング社、VTTフィンランド技術研究センター、Woodly

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