クリエイティブなライフスタイルの「種」


では、今なぜ早急にバイオエコノミーに移行する必要があるのでしょう。五十嵐氏は、フェアトレードを例に出します。

「チョコレートやコーヒーが、なぜこんなに安く手に入るかというと、生産者を劣悪な環境、不当な賃金で働かせているから。それに対して、適正な価格で継続的に購入することで、生産者たちを支える貿易がフェアトレードですね。

では、なぜ地球が5億年かけて貯めた石油にはフェアトレードが効かないのでしょう。本来は、地球に対してきちんと対価を払って使わなければいけないはずです。私たちが生きるために、すでに地球が1.75個必要になってしまっています。でも、地球はひとつしかない。つまり、地球1個の生産力で人間が生きていくような仕組みを新たに作りださない限り、もう人類は滅びてしまう。

バイオエコノミーを用いて、地球に対してフェアトレードするような経済の仕組みにしていかなければ、持続可能な未来を実現することはできないのです」

一時的ではない経済のデザインを今、本気で行うべき

バイオエコノミーに関する取り組みは世界各国で始まっています。幅広い環境下で生分解するバイオポリマー製の食器、鋼鉄以上に強い人工タンパク質でできたアパレル製品、耐久性に優れたバイオエンジニアリングプラスチックを使った自動車など、いずれも大きな話題になりました。


バイオ原料のみで作られたフィンランド「Korvaa」のヘッドフォン。科学者にデザイナー、アーティスト、映画製作者のコラボレーションにより、開発された。(c)Aivan Design Agency

日本でも、総合商社大手の伊藤忠商事は、昨年10月にフィンランドの森林業界大手メッツァ・グループとセルロース繊維合弁工場を設立することを発表。今春には、サーキュラーエコノミーの実現を目指す「RENU(レニュー)」プロジェクトを立ち上げ、第一弾として再生ポリエステル事業の展開を開始しました。リリース以降、国内外から大きな反響があり、さらなる拡大を予想していると言います。


RENUの第一弾は、工場で出る残布や古着を原材料に、石油由来のポリエステルと同様の品質を実現したケミカルリサイクルポリエステル。

「経済性と地球環境保護が、今は完全に排反事象になっています。そのため、バイオエコノミーが経済的にいくら儲かるようになるのかがよく分からず、ビジネスに取り入れることができないと考える方も多いのではないでしょうか。

もちろん、バイオエコノミーそのもので利益を出すことは簡単なことではありません。ですが、バイオエコノミーに切り替えることによって無駄なお金を使わなくなり、幸福度が上がり、そこから生まれる経済がもたらす影響は大きいと思います。一瞬の利益でなく、2次的3次的なところまで考えて経済をデザインするのがバイオエコノミーです」(五十嵐氏)

バイオエコノミー推進のカギは“女性”

では、世界最先端のバイオエコノミー社会を創造するため、日本に必要なものは何なのでしょうか。それは、女性が活躍できる社会環境であると五十嵐氏は言います。

そう考えるようになったのは、ヨーロッパのサステナビリティ都市No.1であるフィンランドのエスポー市で、バイオエコノミーを牽引しているシルパ・ヘルテル氏に言われた一言がきっかけでした。

「街も住民も、さらに企業まで税金を多く取られて、努力を強いられる。サステナビリティなんて三重苦じゃないか、そんなのは上手くいくはずがないのでは? と、敢えてちょっと意地悪なインタビューをしたんです。

すると彼女は、『そんな余裕のない考え方だから日本でバイオエコノミーが発展しないんだ。まず第一に、男性のあなたが話をしに来ている時点でダメだ、サステナビリティは女性が考えるものなんだ』と言い切ったんですよ」

文=佐藤祥子、国府田淳 取材協力=伊藤忠商事株式会社、エスポーマーケティング社、VTTフィンランド技術研究センター、Woodly

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