それ以降、今日まで私たちは地球の自然資本を過剰に使い込み、赤字状態で暮らしていることになります。そして、この「地球の使い過ぎ」状態は、1970年初めからずっと続いています。
国際シンクタンク「グローバル・フットプリント・ネットワーク」によると、アース・オーバーシュート・デーの到来は年々早まっている。
その問題を解決するとされているのが、“バイオエコノミー”です。バイオエコノミー(生物圏に負荷をかけない経済活動)とは、生物の持つ能力や性質を活かした技術や資源などを活用し、再生可能であり循環型の経済社会をつくる概念。例えば、脱石油で注目されるバイオプラスチック、シェアが拡大するバイオ燃料などもバイオエコノミーのひとつです。
2030年には180兆円の巨大市場に成長すると予想され、世界各国で注目を集めており、日本政府も今年6月、11年ぶりにバイオ戦略を策定し、2030年に世界最先端のバイオエコノミー社会の実現を目指すと発表しました。
そんなバイオエコノミーの可能性について、バイオエコノミー研究の先駆者である東京大学大学院農学生命科学研究科准教授 兼 VTTフィンランド技術研究センター客員教授 五十嵐圭日子(きよひこ)氏に聞いてきました。
地球に対してフェアトレードする仕組みが必要
バイオエコノミーは、原料、変換プロセス、評価基準という3つの視点からなる、非常にシンプルなものです。
その3つとは、まず第1に、原料に生物資源(バイオマス)を使っているか。石油や石炭など、地下から掘った資源ではなく、地表で光合成されている有機物だけで、人間が生きられるようにするという考えです。
第2に、変換プロセスがいかに生物の営みに沿っているか。例えば、微生物を使った発酵のように、生物の力を利用すればエネルギーを使わなくて済むし、生産されてきたものが生物に負荷をかけることはありません。
最後に、生産プロセスすべてが生物圏に負荷をかけていないかどうか評価をすること。現代社会は評価が全て“コスト”ですが、その結果生物圏に負荷をかければ結果的に地球にはマイナスです。
この点について五十嵐氏は、「今世紀は価値観を変えていかないといけない。バイオエコノミーというのは、きちんと理解できていないとただの概念になってしまいます。でもこれは、人間を広く生物圏と捉え、そこに答えを出していくための“経済原理”なんです」と語ります。