自殺が他殺を上回るようになった米社会の「病巣」

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しかし大切なのは、情緒的な印象だけで何かの事象を他人のせいにしたり、ソーシャルメディアのせいにしたり、あるいは行政や政治家のせいにと、短絡的にしないことではないかと思わされる。

合わせて、我々の社会の経済的便益が、誰かの犠牲や社会コストで成り立っているという複雑性からも目を背けてはいけない。


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ラスベガスのような土地にいれば、どうしてもカジノによる破産がらみでの自殺から社会が無関係でいることができない。かといって、歴史のない人工的なこの砂漠の町が、企業を呼び込み、学校を建て、病院をつくるためには経済のエンジンたるカジノを手放すことはできなかった。

とはいえ、自殺を考える人を救うべく、今日、さまざまな無料のホットラインが業界や行政によって施されていることも忘れてはならない。事実、全米一の自殺率であったネバダ州は、こうした試みもあってランキングを10位に下げてきている。

アメリカの自殺率の話は日本にとって決してひとごとではなく、ましてやカジノをこれから抱えていく日本は、ますますそこに向き合う姿勢が問われる。その覚悟がないのなら、そもそもカジノなんか始めるべきではないと、ラスベガスに住む筆者は考えている。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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