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2019.12.11 07:00

ジェイ・Zが「音楽業界の敵」と呼んだSpotifyに復活した理由

ジェイ・Z(Photo by Shareif Ziyadat / Getty Images)

12月4日に50歳の誕生日を迎えたジェイ・Zの過去の楽曲が、スポティファイ(Spotify)で再び視聴可能になった。この動きに驚いたのは、ジェイ・Zが共同オーナーを務めるストリーミングサービスTidal(タイダル)の利用者らだ。

ジェイ・Zは「アーティスト・ファースト」をスローガンに掲げ、ストリーミング業界の変革を目指してTidalを2014年に5600万ドル(約60億円)で買収した。しかし、Tidalは会員数で、業界最大手のスポティファイに圧倒的な差をつけられていることが、度々報じられていた。

2017年にスプリントはTidalに約2億ドルを出資したが、2014年以降、Tidalの財政状況は厳しい状態が続いている。同社は2014年に1040万ドルの損失を計上し、2015年も280万ドル、2016年も440万ドルの赤字を生んでいたとされる。

ジェイ・Zは、2017年にスポティファイでの楽曲配信を停止していた。この動きは、アーティストの報酬が低いとされるスポティファイのビジネスモデルに抗議したものだった。Tidalの立ち上げにはジェイ・Zの妻のビヨンセやカニエ・ウェスト、マドンナ、カルヴィン・ハリス、リアーナ、ジェイソン・アルディーンなどの豪華アーティストらが賛同した。

しかし、当初想定したほどユーザー数は増えず、2017年にカニエ・ウェストはTidalを去っていた。他のアーティストも最近はTidal絡みの動きが報じられていない。

Tidalが厳しいポジションにあることは明らかだ。今年5月にスポティファイは有料会員数が1億人に到達したと宣言した。また、アップルミュージックの会員数は今年6月時点で6000万人を超えたとされた。一方で、Tidalの会員数は2016年時点で300万人でしかなかった。

高音質なハイレゾ音源を売りとするTidalの月額費用は、このカテゴリで最も高額な月額20ドルとなっている。同じくハイレゾに注力を開始したアマゾンミュージックは14.99ドルで、アップルミュージックは9.99ドルだ。

この勝負に勝ち目は無いと判断したジェイ・Zは、よく言われることわざ「If you can’t beat them, join them.(勝てない相手なら仲間になれ)」的なアプローチに進むのかもしれない。

ジェイ・Zはかつて、スーパーボウルの試合で黒人の社会的平等を訴えた選手がNFLから処分されたことで、NFLを強く批判していた。しかし、今年に入りジェイ・ZはNFLと和解し、彼のレーベルがスーパーボウルのハーフタイムショーの演出を手がけることになった。一部の人々は、ジェイ・Zは金に目がくらんだと怒りの声をあげた。

編集=上田裕資

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