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2019.12.29

3Dプリンター界のユニコーン「カーボン」がIPOの見通し

カーボンCEO エレン・クルマン(Photo by Joe Scarnici / Getty Images)

3Dプリンターのユニコーン企業、米カーボン(Carbon)が11月21日、共同創業者のジョー・デシモーネに代わり、デュポン元CEOのエレン・クルマンがCEOに就任すると発表した。2013年の創業以来CEOを務めてきたデシモーネは会長職に就任する。

現在63歳のクルマンは2016年からカーボンの理事を務めていた。彼女はデュポンを2015年に退社していた。「再び企業の経営に携わるのであれば、納得できる企業でなくてはならないと考えていた。それがカーボンであり、他社であれば引き受けていなかった」と、クルマンはフォーブスに語った。

3Dプリンター分野のスタートアップで最も高く評価されているのがカーボンだ。同社はセコイアキャピタルやGV(旧グーグル・ベンチャーズ)、Madrone Capital Partners、Baillie Giffordなどから累計6億8000万ドル(約740億円)を調達し、企業価値は24億ドルとされている。

同社が6月に実施したシリーズE資金調達は、上場前の最後の調達になる見通しだ。IPOに向かうカーボンにとって、クルマンの参画は大きな力になる。

クルマンはGEでキャリアをスタートさせ、1988年にデュポンに入社後は医療画像解析ビジネスを担当した。デュポンで初めての女性CEOになった彼女は、フォーブスの「世界で最も影響力のある女性」にも選ばれた。

カーボンは、デジタルライト合成(Digital Light Synthesis)と呼ばれる3Dプリンティング技術で知られている。同社が投資家の高い注目を集める理由の一つは、アディダスとの提携だ。

カーボンはアディダスに、3Dプリンターでしか作り出せない格子構造で軽量なミッドソールを提供している。さらに、アメフト用品のリデルには3Dプリンティングで作ったアメフト用ヘルメットを、歯科用品メーカーのデンツプライシロナにはマウスピース型矯正器具などを提供している。また、ジョンソンエンドジョンソンには手術で使う生体吸収性高分子ポリマーを使った製品を提供している。

カーボンはまた、1000台近い3Dプリンターを定額制で貸し出している。大型プリンターの利用料は年間20万ドルとされる。フォーブスの推計では、カーボンの今年の売上高は1億ドルを超える見通しだ。

カーボンが10月に発表した3Dプリンター向けレジン(樹脂)の「RPU 130」はデュポンと共同開発したものだ。共同創業者のデシモーネは、クルマンの知見を取り入れたカーボンが今後、「世界を大きく変える企業になる」と語った。

編集=上田裕資

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