動画配信サイト「ネットフリックス」で、「天才の頭の中:ビル・ゲイツを解読する」というドキュメンタリーが公開されている。非常によい内容だ。ネットフリックスを観られる読者諸賢にはぜひ観ていただきたい。
学びのポイントはたくさんある。その中で特に注目したいのが、本を読んでいるシーンがすごく多い点だ。メガネの先をかじったりしながら黙々と本を読む。とにかく読む──。
マイクロソフトのCEOだった90年代から1週間に最低1冊は本を読み、年に1度は1週間の「Think Weeks(熟考するための週)」という時間を持つ。その間、とにかく本を読みまくるのだ。世界最大規模の資産家で、マイクロソフトの共同創業者で元CEO、世界最大規模の慈善団体「ビル&メリンダ・ゲイツ財団」の共同会長だ。忙しくないはずがない。しかし、そのようななかで本を読む時間をもつ。彼を見ていると、「忙しくて本を読む時間がない」というのは、ただの言い訳にしかすぎないことがわかるだろう。
立命館アジア太平洋大学(APU)の出口治明学長もほぼ同じことを述べている。曰く、日本が他国に比べて成長率が劣るのは日本人が「低学歴」であるからだ。
「低学歴?」と疑問に思った向きもいることだろう。実際、日本の経営者はいわゆる東大や早慶などの有名大学卒が多い。特に日本の大企業はそのような“有名大学”卒の人たちが圧倒的だ。日本は学歴主義社会だ、という人もいる。しかし出口さんはそう考えていない。
ここで言う「低学歴」とは有名大学卒ではない、という意味ではなく、社会に出てからの学ぶ蓄積が少ない、ということを言っているのだ。本を読まない、人の話を聞いたり、学んだりしにいかない。勉強しなおす機会が非常に少ない──。
毎日が仕事の予定でいっぱいだ。会食の機会も多く、ほぼ毎日だったりする。週末も接待ゴルフなどで忙しい。それでも、周りの人はがんばっていると褒めてくれる。しかし、学びの機会が圧倒的に少ないので、どんどん錆びついてくる。また日々、仕事で会っている人たちもほぼ相似形の人たちなので、忙しく働いているのに情報が古びてくるという問題が起きてくる。それが「低学歴」という状態だ。
出口さんは、それを解消するためには「人・本・旅」しかないという。この場合の「人」も、自分と相似形の人間ではなく、別の視点や深い洞察力をもつ、教えを請うに値する師のことを指す、と私は考えている。
日本人が一生懸命に勉強をするのはせいぜい高校まで。大学から勉強をしなくなる。それでも、今日(こんにち)の学生が昔の学生よりも勉強をしているのは間違いないが。
とはいえ、海外の学生に比べると学びの量と質が共に足りないように思われる。問題は大学生だけではない。社会人になってからの学びが圧倒的に少ないのだ。学ばなければ、圧倒的に労働生産性が低くなる。日本の労働生産性が低い理由。それは諸外国と比べて、“学歴”が低く、学びが足りていないからである。
では、どうすればより学べるのだろうか?