説明し過ぎは逆効果 建設的なフィードバックをうまく与える方法

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「改善のための大きな一歩」とは魔法のようにひらめく瞬間で、自分が間違っていたことや何が間違っていたのか、なぜ間違ったのか(あるいはどのようにするのが正しいのかまで)悟る瞬間だ。

誰かに修正のためのフィードバックや建設的な批判を伝える場合は、改善のための大きな一歩を踏み出させる上で十分な量のフィードバックを与える必要がある。

これはシンプルなことに思えるが、多くのリーダーは建設的な批判をする際に、従業員が改善のための大きな一歩を踏み出す上で必要な量をはるかに超える情報を与えてしまう。多くの管理職は従業員のミスについて詳細な情報を述べ過ぎて、従業員がフィードバックを吸収したり処理したりするどころか、上司の言うことを全て聞くことさえほぼ不可能にしてしまう。

ここで、例を挙げて説明しよう。パットとクリスは2人とも顧客担当者で同僚だ。2人は先週、会社の大口顧客の1社と会議をした。パットはうまく振る舞ったが、クリスは怒りや不満を抑えきれず、それを言葉や振る舞いに反映させてしまった。パットはクリスに建設的なフィードバックをしようと心に決め、関連する情報を伝えるため次のように述べた。

「先週の取引先との会議で、顧客があなたの発言に怒りを感じ、顔が赤くなっていたことが3回ありました。どの発言か分かりますか?」

パットは「どの発言のことか分かりますか?」と尋ねることで、クリスが既に改善のための大きな一歩を踏み出しているかどうかを見極めようとしている。クリスが「大きな失敗をしてしまった。あんなことを言うべきではなかった。今後はもっと、うまく怒りを制御する必要がある」と考えながら会議を後にした可能性が大いにあるからだ。

クリスが改善の大きな一歩を踏み出していたならば、パットがこれ以上続けても意味はない。もしパットが情報を次から次へと追加し話し続ければ、クリスは非常に反抗的・防御的になるだろう。

修正のための大きな一歩を踏み出している場合、その人のミスを20分間かけて事細かに説明する必要はない。相手はもう理解しているからだ。

ここで、米プロフットボールリーグ(NFL)でプレーするクオーターバックのスター選手がパスに失敗し、ボールが途中で取られてしまった例を考えてみよう。その選手が優秀な人材だったら、「あのパスが悪かったことは分かっているだろう?」と尋ねた場合、「はい。後ろ足に体重が乗っている状態で投げてしまいました。走っていたので足を踏ん張っていませんでした」と答えるだろう。

これが修正のための一歩だ。この言葉を聞いたら、その後10分間かけて「足を踏ん張らなかったことは知っているだろう?」と説明する必要はない。

相手が修正のための一歩を踏み出しているのに、何を間違っていたかについて細かいことをいちいち非難し続ければ、これはもはや対話ではない。
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翻訳・編集=出田静

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