トランプの「対仏関税」はLVMH等のラグジュアリー業界にも脅威

トランプとLVMH会長のベルナール・アルノー(Photo by Drew Angerer/Getty Images)

米トランプ政権は12月2日、フランスが導入を決めた米IT大手などを対象とするデジタル課税への報復措置として、フランス産品約24億ドル(約2600億円)相当への報復関税の導入を検討すると発表した。

トランプは、フランスが米国のテクノロジー企業を不利な立場に追い込もうとしていると非難し、シャンパンからチーズまで、あらゆるフランス産の製品に追加関税を課そうとしている。

フランスを代表する輸出品であるシャンパンやスパークリングワインは打撃を受ける。また、チーズも対象品目に含まれており、グリュイエールチーズからフランス最古のチーズと呼ばれるロックフォールまで、あらゆる種類が対象になる。

ラグジュアリーブランドのLVMHや化粧品メーカーのロレアルも大きな打撃を受けそうだ。スキンケア製品から口紅まで、全ての化粧品がリストに含まれている。さらに、全てのハンドバッグも対象になる。

トランプとフランスのマクロン大統領は12月3日、ロンドンで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の開幕に先立ち会談を行ったが、両者の意見は噛み合わず、外交政策や貿易や防衛など、様々な問題で衝突した。

トランプはフランスが導入したデジタルサービス税に強く反発し、「他国が米企業につけ込むことは許さない」と述べた。

フランス議会は今年7月、大手テック企業を対象とするデジタルサービス税の導入を承認した。これはフランスでの売上高が2780万ドル以上で、世界での売上高が8億3000万ドル以上の企業の、フランスでの売上に3%の課税を適用するものだ。

米国通商代表部(USTR)はその後、調査を進めた結果、12月2日にフランスの措置が、「不公正な貿易慣行に当たる」との報告書を発表していた。USTRの報告を受け、トランプ政権はフランス産品に追加関税を課すと発表した。

今回のフランス産品への関税は、トランプ政権が10月にEUに発動した最大25%の関税とは別のものだ。世界貿易機関(WTO)は、米欧の大手航空機メーカーへの補助金をめぐる紛争で、米国がEUからの輸入品に、年間で最大約75億ドルの報復関税を課すことを承認していた。

それ以降、米国はEUから輸入する航空機に10%、英国のスコッチウイスキーやスペインのオリーブ、ドイツのコーヒーなどに25%を上乗せしている。

フランスのワインにも既に25%が上乗せされていたが、今回のフランスへの報復関税が実施されれば、さらに25%が追加されることになる。

米国のライトハイザーUSTR代表は、オーストリアとイタリア、トルコの3カ国のデジタル課税についても、調査を開始するかどうかを検討していると述べている。

編集=上田裕資

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