余計なものは削ぎ落とす。こんまりと「サードドア」著者の共通点

アレックス・バナヤン(左)と近藤麻理恵(右)


近藤:本当に大切なことを見つけるために、自分と向き合うという点は共通していますね。その手段として、こんまりメソッドでは片づけの方法を提案しています。

私は片づけコンサルタントとして、海外の方と仕事をするようになって改めて日本の国民性にも向き合うことができたと思っています。

各国を訪れる生活から得ることのできた気付きのひとつとして、日本人の人生には、持って生まれた「きめ細やかな性格」が大きな影響を与えているということです。

洗濯物の端と端を揃える、棚のサイズに合わせてぴったり収納することなど、家が綺麗に片づく結果に行き着くまでの過程からも、日本人は喜びを感じ取ります。そして、このきめ細やかさは行動だけを指すものではなく、周囲の人への気づきや配慮にも繋がっています。

日本人は直接言葉にされなくても、同じ家に住む家族、または職場の仲間、友人からの思いを敏感に感じ取ることができますよね。

そして、このきめ細かな性格の持ち主だからこそ、身の回りが綺麗に整っていることが自信に繋がる国民のようにも思えます。家の大きさではなく、「整理整頓された清潔な家が相応しい自分」に自信を感じるのは、世界的に見ても珍しいのではないかと思います。

アレックス:自分に自信を持つ、という点で思い出したのが、日本の読者からは、他の国の読者とは少し異なる反応をもらったことが印象に残っています。世界中で発売された書籍ですが、中でも日本の10代の読者からのフィードバックが圧倒的に多かったことも、興味深いですね。

僕は本の中で一度も「自分に自信を持て」と明言していないのですが、日本の10代の読者からは「自信を持つきっかけをくれてありがとう」という感想が多く届いたのです。

他の国の読者からの感想で、特に多いのが「自分は何をすればいいのかわからない」と言う声なので、その違いは何なのだろうと考えました。

サードドアに登場する著名人たちは、皆、昔から目指していた目標がありました。

彼ら、彼女たち、そして作家経験のない僕がビル・ゲイツやレディー・ガガへのインタビューを実現させるストーリーに勇気付けられ、「自分に足りないのは、目標に向かって突き進む自信だったんだ」という感想を持ってくれたのが、日本の若者だったのです。

日本では、やりたいことがない若者が多いと言われているそうですが、果たして本当でしょうか。

先ほどこんまりさんも言っていましたが、日本人は周囲の目を大切にする優しさがある。その優しさが裏目に出て、人の前では「自分のやりたいことを大きな声で言えない」人もいるのではないでしょうか。
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写真=曽川拓哉 構成=守屋美佳

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