南米のチリでは、10月中旬に始まった地下鉄の運賃値上げに反発する学生たちのデモが、数十万人規模の抗議活動に膨れあがった。路上にくり出した人々は経済格差の改善や新たな憲法の制定を求めている。
コロンビアでも近年で最大規模の、反政府デモが起きている。11月には路上を埋めた数十万人の群衆が政府に対し、汚職の追放や格差の是正を求めた。
世界最貧国に挙げられるカリブ海のハイチ共和国でもここ1カ月以上、反政府デモが続いている。人々は腐敗した官僚システムやインフレ、社会資本の不適切な配分に抗議し、ジョブネル・モイーズ大統領の辞任を求めている。
今年9月、インドネシア議会は汚職撲滅委員会(KPK)を弱体化させる法案を可決させ、首都ジャカルタの国会前では大規模なデモが続いている。デモ隊の一部は警官隊と衝突し、数百人が負傷したと報じられた。
米国による経済制裁を受けたイランでは11月中旬、ガソリン価格が50%も急騰したことを引き金に、大規模な反政府デモが発生した。数千名の抗議集団が警察と衝突し、数百名が死亡したと伝えられている。
民主化の波が押し寄せたイラクでも、10月から政府への抗議活動が活発化している。市民らは失業や官僚の腐敗の追放を訴え、新政府の樹立を求めている。
中東のレバノンにおいても11月から大規模な抗議活動が始まった。背景には政府が進める緊縮財政や、汚職の問題、さらには新たに提案されたワッツアップなどのメッセージアプリの利用にかかる税金の問題がある。事態は今後さらにエスカレートしそうだ。
米国のシンクタンクStratforの経済アナリスト、Michael Mondererは「世界各地で抗議デモが吹き荒れ、政治や経済に大規模な打撃を与えかねない状況にある。このような状況においては、従来は見過ごされてきた政府の腐敗や経済の格差が、これまで以上の人々の怒りを呼び起こす危険がある」と述べた。
今年に入り、香港を筆頭に世界各地で反政府デモが頻発しており、抗議活動家らが警察と衝突するケースも増えている。多くの国で、デモの鎮圧に警察が投入され、一部の国では軍隊が動員されている。その結果、死傷者が発生する例も相次いでいる。
これまでのところ反政府デモが前向きな結果をもたらした例は少ないが、アルジェリアやスーダンなどでは独裁政権の崩壊につながった。