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2019.12.06

「挑戦者が湧き出る社会」を目指す 出井伸之の新構想が始動

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出井伸之


Giverの役割とは何か

では、アドベンチャービレッジが目標とする「挑戦」の価値を認める社会土壌はどう育てればいいのか。そのためにはまず「人に惜しみなく与えるGiver(ギバー)の精神が重要だ」と、アダム・グラント著『GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代』の翻訳監修を務めた楠木建(一橋大学教授)は話す。

「アダム・グラントは著作の中で人間を3つの種類に分けました。それがGiver(ギバー)、Taker(テイカー)、Matcher(マッチャー)です。Giverとは、与えるときに見返りを期待せず惜しみなく与える人のこと。なぜ彼らがひたすら与えるかというと、対象を面白いと思っていたり、価値があると感じているから。ぜひGive&Givenの精神でアドベンチャービレッジにかかわってほしい」


(左から)谷本、安宅、松本、水野、出井(撮影:松崎美和子)

続く第二部の基調パネルディスカッションでは、「新しい事業モデルの創出と Giverの役割」をテーマに、安宅和人(慶應義塾大学教授、ヤフーCSO)、松本大(マネックスグループ取締役会長・代表執行役社長)、水野弘道(国連責任投資原則理事・年金積立金管理運用CIO)、出井が登壇。谷本有香(Forbes JAPAN副編集長)がモデレーターとなり、議論を深めた。

Giverの役割について松本は「スタートアップを育てるのに必要なのは、資金だけではない。経験やマーケティングのノウハウ、ネットワークを利用させるなど、いろいろな『Give』の形があるだろう。日本はこのGive自体の選択肢が少ないように思える。増やすための仕組みが必要だ」とコメント。

続いて水野は、「見返りを期待せずに与えるというGiver精神そのものは、投資家のリターンを最大化する資産運用側の人間にはマッチしない考え方だったかもしれない。しかしいまは『金儲け』と『社会貢献』の境目は曖昧になり、それらをブリッジするようなダイナミックな変化が起こっている」と分析した。

日本が抱えるディープイシューを解決へ

「日本は他国と比べてディープイシューが見つけにくい社会だが、これからのスタートアップはどんな課題に注目すべきか」という問いかけに、安宅は「やるべきことは山ほどある」と会場を盛り上げ、持論を述べた。

「まずは世界をアップデートする課題がどんなものか明確にするべき。環境省の2100年予測によれば、東京の夏の気温43度になる。台風は風速90メートルにもなるという。ということは、日本はこれから街も家もつくり直さなければならないフェーズにきていると言えるだろう。すぐ目の前に、私たちが超絶ディープな気候変動の問題を抱えているのは事実であるとともに、この分野が巨大産業になることは間違いない。

さらに、ダイバーシティを大切にしたスーパーチームをつくるべきだろう。日本の国会議員のうち女性はわずか10.1%。ケニアでは15%であるのを見ても、先進国では圧倒的ボトムだ。多様性こそが私たちを強くし、新たなアイデアを生む。先日のラグビーを見ていても明らかだ。

また変人密度の問題もある。小学校を中退させられたエジソンのように、いまの日本の教育制度からはドロップアウトしてしまうような世界を変え得る天才アウトライヤーをどう支え、育てていくのか。このように少し考えただけでも、我々には取り組むべき課題が山ほどある。とにかくやるしかない」

こうした課題を解決するには、常識を一変させるような新しいビジネスモデルや革新がどうしても必要だ。また彼らを支えるVCや大企業、そしてエコシステムビルダーといった「Giverの存在」が連携し、大きなうねりとなって社会を変えていくことができれば、日本の長い冬の時代も終焉を迎えるだろう。

アドベンチャービレッジの取り組みは、イノベーティブな「冒険」ができる社会への第一歩となるのか。これからの活動が期待される。

文=松崎美和子 写真=クオンタムリープ提供

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