イノベーション・エコシステムの内側


「Start-up Muster Report2018」によれば、現在、国内の約20%のスタートアップ企業がクイーンズランド州に拠点を置いており、これはシドニーのあるニューサウスウェールズ州(NSW)に続いて第2位で、いまや起業する揺籃の地となっている。イノベーションを必要とする農業や鉱業などを主要産業とするこの州で、多くのスタートアップが積極的に技術導入に取り組んでいる。

クイーンズランド州政府のイノベーション支援について、州政府の日本駐在事務所の代表である安達健氏、投資誘致ディレクターの猪岡メリッサ氏、マーケットサポートオフィサーのカツ・ジェイミー氏に話を聞いた。



2005年からスタートアップ支援を開始

オーストラリアでは、2015年に政府が7300億円以上のイノベーション・ファンドを発表すると、国全域でイノベーションブームが到来、2018年にはスタートアップ企業数が約1460社となるほど急増した。各州政府がスタートアップをサポートするためのファンドやハブなどを開設したり、R&D費用が約50%も還付される税制で支援するなどしている。

しかし、クイーンズランド州では、それに先駆ける2005年から3000億円以上の規模で「Smart State Strategy」をスタートさせ、以来15年間にわたって、イノベーションに関する政策を推進している。なかでも、2015年に始まったアドバンス・クイーンズランド・ファンド(Advance Queensland Fund)は現在500億円以上にまで成長し、国内最大のものとなっている。

その資金は、スタートアップ投資や大学への研究支援、海外企業の誘致だけではない。既存の企業で行われるイノベーティブな取組みや、今年から始まった小学校でのコーディングの義務化などにも使われ、多方面から州のイノベーションを促進している。

2016年にクイーンズランド州は国内で初めて「Chief Entrepreneur」という役職を設け、その職についた著名起業家や投資家がスタートアップ支援を後押ししている。Chief Entrepreneurの役割は、概ね以下の通りだ。

・インタキュベーター、アクセラレーター、コーワキングスペースと連携して、州のスタートアップエコシステム開発をサポートする。
・クイーンズランド州の中心地と遠隔地を繋ぎ(州の面積は日本の5倍)、州全体の起業家精神を育成及び促進する。
・州のスタートアップ企業や起業家を地元や国内、海外にも広める。
・国内、海外の投資及びベンチャーキャピタルをクイーンズランド州へ誘致する。
・地元の起業家、スタートアップ、中小企業を、適切な機会を設けて結びつけ、成長、拡大、雇用創出を支援する。

文=森若幸次郎 / John Kojiro Moriwaka

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