中国が「AIの標準化」に拍車 国際標準の提案も

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中国国内で、政府とAI企業が参画した顔認証技術の標準化組織が発足した。11月28日の現地メディア報道によれば、中国の「全国情報保安標準化技術委員会」の主導のもと、27の企業で構成された「顔認識技術国家標準化業務チーム」が設立されたという。

業務チームのトップには、中国の大手AI企業センスタイム(商湯科技)が選ばれた。今回の標準化組織には、センスタイム以外にも、テンセント、シャオミ、ピンアン(平安)、アント・フィナンシャル(アリババグループ)、ダーファ、アイフライテックなどの大手企業が名を連ねている。

中国政府および企業は現在、国内にとどまらず、顔認証技術の国際標準の提案を行っているとの報道もある。中国のZTE、Dahua、China Telecomなどがその担い手で、国連の専門機関・国際電気通信連合(ITU)に対し、顔認証、ビデオカメラモニタリング、都市および車両監視技術などについて国際標準を提案しているという。

仮に提案されている国際標準が通れば、一帯一路構想の中にあるアフリカ、中東、アジアなどに中国のAI関連技術、プラットフォーム、サービスなどより広く普及していく可能性がある。

なお中国では、12月1日以降に新たに電話番号を取得する際には、顔データの提出が法律で求められるとも言われる。総合的にみると、日本や欧米諸国がプライバシー保護の観点から二の足を踏んでいる間に、中国政府の後押しに支えられた各企業が標準化を進め、国際市場に積極的に打って出ようとしている様子が伺える。

中国では、11月末に国家人工知能標準化総本部が牽引し、中国電子技術情報標準化研究院が主管する「人工知能標準化白書2020」の編纂着手会および、第二次人工知能標準化討論会が深センで行われた。国家人工知能標準化総本部は、中国国内だけでなく国際的な標準化のための作業を行い、標準化の企画・体系・政策の下絵などを策定する組織である。

討論会には、アリババ、テンセント、ファーウェイなど、AI技術を保有する中国国内外の90の企業が参加したという。討論会を取り仕切ったAI企業Intellifusionの関係者は、中国にはアルゴリズムやチップ、ビッグデータプラットフォームなどAIに必要な技術が揃っていることを強調。暗に国際標準の担い手となるべきであるという自信をのぞかせた。

海外各国、特に日本を含む西欧諸国では、顔認証や監視技術など、中国が持つAI技術の広がりや市場獲得に懸念する声も高まっている。国内でAI産業への投資を行ってきた中国だが、国際舞台への進出の際には大きな反対や意見の衝突が生まれることはまず間違いない。

来年、中国による国際標準化の動きと各国の反応というイシューは、AI産業全般にとって大きな話題となっていきそうだ。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河鐘基

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