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2019.12.06 16:00

部活の指導者にプロフェッショナルを。新ビジネスを生み出すリーフラスが目指す道

(左より)パーソルキャリア 執行役員 大浦征也、リーフラス代表取締役 伊藤清隆

多くの人の“はたらく”をサポートしてきたパーソルグループ。同グループのパーソルキャリア 執行役員 大浦征也を中心としたスポーツビジネスチームは、オフィシャルスポンサーを務めるパ・リーグとの協賛イベントや、各スポーツ団体との採用イベントを実施するなど、ビジネス面で幅広くスポーツを支えている。

そんな大浦が注目しているスポーツビジネス企業、それが子ども向けのスポーツスクールを展開しているリーフラスだ。『スポーツを変え、デザインする。』という企業理念のもと、子ども達・社会の問題を、スポーツにより解決することを使命と捉え、ソーシャルビジネスを実践している。

全国展開しているスポーツスクール事業では、会員数は4万7000名を超え、スクール数3000拠点以上と子ども向けスポーツスクール業界では、圧倒的No.1の実績を誇る。また、運動部活動支援・ヘルスケア支援・スポーツによる地域活性化事業なども行う。

自身も野球一筋で育ってきたという大浦が、現在のスポーツ界の課題とこれからのスポーツビジネスについて、同じくスポーツを支えるリーフラスの代表取締役・伊藤清隆に聞いた。


大浦征也(以下大浦):リーフラスさんは、課題の解決方法にスポーツを採用していて、選手のキャリア形成と子ども達の育成を同時達成できている。私はここに、今後のスポーツの可能性を感じています。

伊藤清隆(以下伊藤):私たちは2001年に福岡で創業しました。現在は32都道府県に事業所があり、社員数は約700名、全員が正社員のスポーツ指導員です。その中にはサッカーや野球の元プロ選手もおります。プロスポーツ選手のセカンドキャリアは大切で、やはりこれまでの経験を活かせるスポーツの指導が最もセカンドキャリアに適していると思います。また、元プロに教わることは子ども達にとっても得難い経験になるのです。



大浦:昨今のトレンドだと、スポーツに最新のテクノロジーを導入するといったビジネスは数多くありますが、リーフラスさんのようにスポーツ本来の魅力を生かしてビジネスにつなげているのは珍しいですね。

楽しいはずの体育や部活が苦しくなってしまい、自己肯定が難しい部分がある現状で、スポーツ好きの子どもが大人になって、この業界に戻ってくるという循環を作っている。スクール数も多く、社員も700人を超え、サステナブルなビジネスモデルだと感じます。

伊藤:創業当時は子ども達がスポーツをできる場は限られていました。クラブチームの少年部や地域の少年団くらい。これらはスポーツが好きで、そして、何よりも運動が得意な子ども達のものだったのです。一方で、運動が苦手な子は取り残されてしまう環境でした。そこで私は、平日に習い事感覚で、スポーツを誰でも学べて明るく楽しめる場をつくりたいと思ったんです。


 
「部活はブラックボックスの中にある」(伊藤)

大浦:ここ数年、部活を取り巻く問題が目につくようになってきました。 “はたらく”をサポートする私たちも、先生の労働環境に課題感をもっています。これらの現状について教えてください。

伊藤:日本の部活はまさにブラックボックスでした。働き方改革などで教員の過重労働が問題になってきて、はじめて数々の問題が明らかになりました。教員は休日も部活の指導をして、身体や精神を擦り減らし、体調を崩したり離婚したりするケースが多くみられます。

子ども達も部活の犠牲になってきたと言えます。日本の部活は古くから生徒指導の一環として考えられており、例えば授業ではニコニコと優しい先生でも、部活では厳しく怒鳴りながら指導して、生徒はそのギャップに驚く。先生が部活を利用して生徒をコントロールしているんですね。また、野球経験のない教員が野球部の顧問となったり、指導者不在の部活動があったり……でも、これは世界的に見て稀なこと。スポーツ先進国の標準からは、かけ離れていると言わざるを得ません。

大浦:他にはどんな問題があるのでしょうか。

伊藤:部活の場には約3万人の外部指導者がおり、毎年増え続けています。いわゆる地域のボランティア。それによって学校の先生は楽になったのですが、指導の資格をもっていない方が大多数です。そこには公になっていない問題を抱えていたりするのです。指導といいながら女子生徒に触ったり、生徒の進路先を勝手に決めたり、また、指定のウエアを購入させたりと。暴言を吐くなど、昔ながらの間違った指導法をとる指導者も多いです。

大浦:リーフラスさんではそうした問題にどんな取り組みをされているのでしょうか。

伊藤:今、各自治体からお声がかかっているのは、『部活コーディネート制度』です。

来年度からスタートするこの制度は、各地域の教育委員会と連携し、我々がコーディネーターとなって外部指導員を採用・教育・監督する。我々が部活動現場を見て周り、なにか問題が明らかになった時に外部指導員の進退を決定できる関係です。また、外部指導員に適切な指導法を教えるのもコーディネーターの重要な役割です。



その上で、将来的に今の部活というスタイルではなく、プロの指導員が有料でスポーツを教えるという環境になることが理想ですね。中学校の野球部に30人が所属していた場合で考えてみましょう。月謝は1万円で、生活が苦しいご家庭は自治体が支援する。それを2部活受け持てば、指導者が60万円を受け取ることができますので、指導員はスポーツ指導だけで生活できるようになります。これにより新たな部活動生250万人の市場が出現し、元プロのセカンドキャリアが現実、多くの雇用が生まれます。

当然、学校に誰でも入れるようになってしまってはいけないので、学校に入るスポーツ指導者には、何かしらの国家資格は必要になると思います。

大浦:千代田区立麹町中学校の工藤勇一校長によると、サッカー部はクラブチームとして活動しており中体連に所属していないとのことでした。部活文化ではない場合のメリットは他にどのような点がありますか?

伊藤:大事なのはその子を認め、自己肯定感をもたせること。勝利至上主義では、下手な子や体が弱い子は試合に出られません。弊社では子ども達に対して『認めて、褒めて、励まし、勇気付ける』指導を行っています。例えば、技術がなくても大きな声がでていたら、そこは褒めるポイント。下級生に優しくしたらそこを褒める。一人ひとりを認めれば、褒めるポイントはどんな子にもあります。私たちはスポーツをすることで人間力=非認知能力を高めることが重要と考えています。だから全員が試合に出ることがルールですし、キャプテンも固定せずに全員が回り持ちで担当します。

大浦:とはいえ、勝利を求める子どももいるのではないでしょうか。

伊藤:子ども達は誰もが勝ちたいと思っています。でもクレームは出ません。というのも、全員出ることがルールなので、そのルールのなかで自分はどこをカバーして、誰をどう活かすかを自分たちで考えるからです。それが自立力の育成に繋がるのです。弊社のスクールを出た子ども達は、中学高校でキャプテンになったり、大会で活躍したりするものも多数おります。自己肯定感を持ち楽しくスポーツをした経験があったからこそ、その競技を追求できるのだと思うのです。小学校から勝負に徹してしまうとこの部分が欠けてしまうんですよね。小・中学校で燃え尽きてスポーツをやめた子どもも日本にはたくさんおります。

ビジネスのチャンスが眠っているスポーツの場



大浦:スポーツには地域を活性化させる力はあるのでしょうか。

伊藤:もちろんその可能性を感じております。人口約3000人の北海道黒松内町と一緒にお仕事をしています。この街には体育館があるのですが、ここの運営を4年前から行っていて、様々なメニューを開発しました。ジュニア向けのものからシニアまで、そうすることで年間30,000人が利用するようになったんですね。ハコがあるにも関わらず活かされていないケースは全国にいくつもあります。観光資源がなくても、スポーツでの地域活性化は可能であることを証明しました。

大浦:ビジネスのチャンスもあるということですね。

伊藤:そうです。スポーツには非常に大きな力があると考えています。ジュニアからシニアまで広く楽しむことができるもの。ただ、これまでスポーツは無償であるべきという考えがありました。2011年にスポーツ基本法が成立し、スポーツをビジネスにすると国が大きく方向転換を行ったのです。

だから良いサービスを受けるためにお金を払うことが当然の時代になりました。元プロ選手やプロ指導者から質の高い指導を受けることで、部活の闇もなくなります。子ども達も喜びます。また、学校の先生も負担が減って教室の中のことにより注力できることに。学校の先生を部活から解放しないと、先生を目指す人がどんどん減ってしまいます。そこで代わりになるのが民間。塾や音楽教室やスポーツクラブが学校と協力することで、先生が子ども達一人ひとりにより光を当ててあげることができるのです。

大浦:先生の労働環境を良くすることにもつながるんですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。


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