ビジネス

2019.12.05

「ジョン、プロフィールを女性に変えたら?」で見えた景色 差別はどうなくせるのか

ATypI 2019東京カンファレンスの基調講演のために来日したマエダ(c) Luke Garcia/Rodrigo Esper/ATypI)


ソーシャルメディアは、基本的にプロフィール写真と名前でアカウントが構成されています。多くの男性は、女性は写真や名前が掲載されれば、セクハラにあう確率が高まるということを知りません。なぜなら、ほとんどの男性はそのような被害にはあっていないからです。

そのことを知らない男性たちは、「なぜ女性はオンライン上で仕事のことを話さないんだ?」と疑問に持ちますが、それは単に話したくないだけか、またはハラスメントの機会を極力避けるためかもしれません。

私自身もこのことについて気づきませんでした。あるとき、知り合いが「ジョン、プロフィールを女性に変えてみたら?」と言って、やってみたのです。すると、突然多くの男性から誘いのメッセージが来るようになりました。知らない人からどんどん誘いが来るのは、本当に気持ち悪かった。

多くの女性はそれを「当たり前」のこととして受け入れていました。なぜなら男性によってシステムがつくられているので、仕方がなかったのです。根本的にテクノロジー自体が男性目線に偏っていたのです。

もし、あなたがビジネス上での成長を望むのであれば、より多様な人材を受け入れるべきです。一部の人々が外されれば、アイデアの多様性を排除することになります。難しいことではありますが、より多様な人々が参加することは、経済的にも「健康」なことなのです。

━━多様な人材を受け入れると聞くと、「差別をしない」などの倫理的な大切さから語られるケースが多いですが、マエダさんはビジネス的成長の文脈で語っている。それはなぜなのでしょうか。

「儲けること以外にもっと大切なことがあるでしょう」という人もいますが、それはわかった上であえて言っています。

「お金稼ぎ」は聞こえのいい言葉です。「深い社会課題について解決しましょう」と言うよりも、「もう10万円、儲けませんか?」のほうが人々の耳に入りやすいでしょう。だからこそ、それらの社会課題が複雑であることを知りながら、私は多様性やインクルーシビティを「ビジネスチャンス」の方向性で皆さんに話すのです。

━━あらためてインクルーシビティはなぜ重要なのでしょうか。

多様な人たちの参加を受け入れれば受け入れるほど、経済的な豊かさにつながり、ビジネスにもいい影響をもたらすからです。ビジネスにおいてインクルーシブでなければ、顧客を狭めることになります。

同時に、それはとても難しいことでもあります。なぜなら、人々は他の人の意見を受け入れるよりも、自分の考え通りに進める傾向があるからです。


(c) Luke Garcia/Rodrigo Esper/ATypI
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写真=Luke Garcia/Rodrigo Esper/ATypI

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