これに関して、東京大学は即座にホームページ上で謝罪している。しかし、このような差別発言は、世界中で後を絶たない。移民への差別、障害者への差別、女性への差別……。排除はあらゆる場面で起きている。
自分とは異なる存在に対する差別をなくし、多様な人たちが自分らしく参加できることを「インクルーシビティ」という。このインクルーシビティがビジネスをする上で重要だと語るのは、ジョン・マエダだ。
ATypI 2019東京カンファレンスの基調講演のために来日したマエダ。数年前から人材の多様性に取り組み、インクルーシビティがビジネスにおいていかに重要かを主張してきた。
(c) Luke Garcia/Rodrigo Esper/ATypI
マエダは、アメリカの美術大学の名門、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)の学長を経て、シリコンバレーへと移り、eBayのCEO顧問、ベンチャー投資会社クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズのデザイン・パートナーに転職し、現在は「WordPress」で知られる、ブログソフトウェア開発企業オートマティックに籍を置いている。
グラフィックデザイナー、 テクノロジスト、計算機科学者、 大学教授、作家。多彩な肩書きをいくつも持つマエダは、なぜインクルーシビティをビジネスに持ち込もうとするのか。そして、より多くの人の目線に立って行動するヒントを、彼の経験から話してもらった。
━━マエダさんは、普段から差別と向き合うことがあるのでしょうか。
私は、住民の93%がアフリカ系アメリカ人で占められているデトロイトで働いています。しかし、普段、グーグルハングアウトで話す人たちの多くは、アフリカ系アメリカ人ではありません。
すると自分が本来のデトロイトの人口構成とは違う世界に住んでいることに気づかされます。それだけで自分が限られた「世界」しか見ていないことと、アフリカ系アメリカ人が自分の世界では排除されてしまっていることに気づかされます。
それ以外にも差別に関しては気づいたことがあります。例えば、ソーシャルメディアの多くは、男性によってつくられています。