自動運転のクルマを選んだら保険は不要に? 責任関係のあり方を学ぶべき理由

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なお、任意の自動車保険については、レベル3までの自動運転車について、サイバー攻撃などの車両制御システムに対する不正アクセスや、自動走行システムの欠陥によって生じた事故を補償するしくみの特約が大手損害保険会社では用意されている。このような特約を自動運転車の普及に先行して整備することで、運転者の不安を軽減し、普及を後押しすることを目的としているという。

このほか、自動運転車に関する保険としては、実証実験を行う事業者向けに、総合補償プランが提供されている。事業者自身だけでなく、関係者(国・地方自治体、システム管理者、施設提供者、自動車製造者等)の過失による事故により、事業者が責任を問われるケースがあるためだ。

自動走行実証実験の内容、保険契約の補償内容、その他リスク状況等を確認した上で、サイバーセキュリティ保険や生産物賠償責任保険(PL保険)、機械保険その他の様々な保険を組み合わせるため、保険料は事業者ごとに個別の見積りとなる。

自動運転車に関する保険会社の取り組み例

自動運転車をめぐっては、損害保険会社が大学や自動車メーカーなどと共同研究に取り組む動きが加速している。

たとえば、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社では、自動運転の普及を見据えたより実効的な研究を進めていくため、2016年12月に群馬大学と産学連携協定を締結。2017年4月より、群馬大学内に研究室を設置し、共同研究を開始している。群馬大学では、全国各地で自動運転車の実証実験を展開していることから、実証実験を通じたデータ検証、社会受容性の調査等を通じて、自動運転車向け保険・サービスの開発に向けた研究を進められるメリットがあるという。

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また、自動運転バスなどを運営する交通事業者は、自動運転車を遠隔で監視し、万が一の際は遠隔で操作するといった新たな業務が発生することが想定される。

同社では、事故時における迅速かつ正確な初期対応をするため、遠隔監視を行う管制システムとの情報連携を目指し、ノウハウの蓄積やトラブル・サポート体制を検討しているとのことだ。

自動運転車の普及で、自動車保険の在り方や補償内容が変わっていく可能性があることを十分に認識しつつ、自動運転車の普及によって新たに浮上するリスクについても、注視しておきたい。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文、図表=竹下さくら

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