ビジネス

2019.12.04

変革期の音楽業界。元バンドマンたちが目指すのは、新たな「ファン活動」の構築

(左)Spectra代表取締役の浅香直紀 (右)Spectra取締役の露木修斗


アイデンティティを確立できる場所にしたい

Freaxを進化させるべく、取締役CTOも採用したSpectra。今後はより一層、技術・技術組織に投資できる会社にしていく予定だという。


(中央)新たに取締役CTOに就任した、元メルカリの山本達也

「これまで“エンタメのIT化”と言ったら、とりあえず受託開発の会社がECサイトを作るといったような感じでした。しかし、本来既存産業のIT化を進めるプレイヤーの役割はテンセントやアリババのように顧客データを取得し、それをもとにLTVをあげる手段を共に考えるものだと思います。

またグッズを買う、ライブに行く、ファンクラブに入る、これらを行うためのサイトの開発を別の事業者がやっていたりする。アーティストのCRMという観点で、ファンのIDは一元化されるべきだと思っています。そういったことを実現するためにも、技術投資を加速させていき、インフラ基盤も考えて作っていかなければなりません」(露木)

例えば、Freaxに蓄積された行動データや指向性データを活用し、事務所やレコード会社、アーティストなどのデジタル化をサポートする取り組みも考えているという。

「音楽業界はレコード、CDでコンテンツの価値が保存でき、なおかつ流通の仕組みも整っていたのでデジタル化を急ぐ必要がありませんでした。ただ、サブスクが一般的になり潮目が変わってきている。僕たちが音楽業界をディスラプトしたいわけではなく、事務所やレコード会社と共創して新たな価値をつくっていければと思っています」(浅香)

長期的な視点を持って取り組んでいくのはもちろんだが、短期的な視点ではFreaxの機能拡充に取り組んでいく。

「今はまだライブに行く前の段階のチケット情報を知る、調べる部分の課題を解決するだけなので、もっとライブに関わる体験を“面”でとっていきたい。ライブだけ見ても、まだまだ大きなペインはあります。例えば、チケット代金を期限までに支払うのを忘れてしまったり、そもそもクレジットカードがなく申し込みができなかったりする。直近ではそうした問題を解決し、ライブに参加するハードルを低くしていけたら、と思います」(露木)

「ファン活動はライブに参加するだけでなく、グッズを集めたり、ニュースを集めたりすることもそう。テレビ番組への出演のチェック、雑誌に出ているかのチェックもそうです。ファンは何でも情報を知りたいし、受け取りたい。それを消費して楽しみたい人だと思っています。それを実現するには、チケット情報、ライブ情報だけでは足りない。

いつ、どのライブに参加したのか。ライブを見て、何を思ったか。どんなグッズを集めているのか。ファン活動をストック情報として残すことも大事だと思っています。“このアーティストのファンです”というアイデンティティを確立できる場所にFreaxがなれたらいいな、と思います」(浅香)

トップ写真=小田駿一

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