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2019.12.04 07:00

変革期の音楽業界。元バンドマンたちが目指すのは、新たな「ファン活動」の構築

(左)Spectra代表取締役の浅香直紀 (右)Spectra取締役の露木修斗

(左)Spectra代表取締役の浅香直紀 (右)Spectra取締役の露木修斗

ここ数年で大きく変わりつつある音楽業界──。

国民的人気を誇る男性アイドルグループ・嵐が、ジャニーズ事務所所属のアーティストとして初めて“サブスク解禁”に踏み切ったことは、日本の音楽業界にとってエポックメイキングな出来事だったと言っていいだろう。

また先日、浜崎あゆみのカウントダウンライヴ「ayumi hamasaki COUNTDOWN LIVE 2019-2020〜Promised Land〜 A」で需給に応じてリアルタイムにチケットの価格を変動する“ダイナミックプライシング”の採用が発表され、話題となった。

刻一刻と現在進行形で変化し続ける音楽業界に身を置き、テクノロジーを活用してアーティストとファンの“新たな関係性”の構築を目指しているスタートアップがSpectraだ。

同社は好きなアーティストのライブや気になるフェスなどの“チケット情報”を見逃さないようにサポートするアプリ「Freax(フリークス)」を手がけている。2019年の9月末にジェネシア・ベンチャーズを引受先とし、数千万円規模の資金調達を実施するなど、今後の成長に向けて、さらにアクセルを踏み込んでいる。



同じ高校の先輩、後輩という間柄で、同じ軽音楽部に所属しバンド活動をしていた、代表取締役の浅香直紀と取締役の露木修斗。同じ大学に進み、同じ会社でインターンを経験。音楽、エンタメへの思いはありつつも、まだ「時期が早い」という決断をし、浅香はメルカリ/ソウゾウで働き、露木はnana musicやTechouseで働く。だが、2人のルーツでもある“音楽”への思いは常に持ち続けていた。

「いつかは音楽、エンタメに携わりたい」

CDからストリーミングへ、チケットの転売を防止へ。テクノロジーによって音楽業界に変化の兆しが見えていたタイミングで、音楽、エンタメ業界に携わることを決意。それぞれ勤めていた会社を辞め、2018年3月にSpectraを共同創業した。

そんな2人が見据える、音楽業界の未来とは何か。

情報を追いきれなくなっている

「僕たちがバンド活動をしている頃は、アーティストがSNSをやるのはダサい、ユーチューブで配信したらコピーされて価値が下がるからやるもんじゃない。そんな声が大多数を占めていました。でも、ここ数年ほどでアーティストたちの価値観は変化した。SNSアカウントを持つのは当然だし、ユーチューブでMVを配信するのも当たり前。最近はどう運用すればいいのか、といった相談も来るほどです。音楽・エンタメ業界の変化を肌で感じています」(露木)

そんなタイミングで会社を立ち上げ、音楽業界で事業を展開していくことにしたSpectra。一言で“音楽”と言っても、さまざまな領域がある。その中で、まず彼らが選んだのが「情報のマッチング」だった。

創業後、テスト的にいくつかの事業を手がけており、その中でもアイドルファンの人が推しメンの新着情報をLINE上で網羅的に受け取れるサービスはユーザーの反応がよかった。

こうした反応の良さから、ネット上の情報を1箇所に集めて提供する仕組みに可能性を感じるとともに、「好きなアーティストの情報を追いきれずチケット情報を見逃してしまうことがあった」という過去の経験から、ライブ情報、アーティスト情報の流通に明確な課題を感じており、これを解決することにした。
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トップ写真=小田駿一

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