一方で、日本を牽引する専門家やオピニオンリーダーたちは、「The Great Company」の定義をどのように考えているのだろうか。
キーノートセッションでは、CYBERDYNE CEOの山海嘉之、一橋大学大学院・国際企業戦略専攻の楠木建教授、アスタミューゼ社長の永井歩、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春が登壇した。
Forbes JAPANは、世界中のデータを集約する企業「アスタミューゼ」に協力を依頼し、多数の指標を用いて、3つのランキングを作成した。「イノベーション効率指標ランキング」「オープンイノベーション指標ランキング」「イノベータ集積度ランキング」だ。12月25日に発売するForbes JAPAN 2月号では、ランクインした企業トップのインタビューを交えて掲載するが、この日の会場で一足先にランキングを公開した。
CYBERDYNE CEO 山海嘉之(手前)と一橋大学大学院教授 楠木建 (撮影:小田駿一)
勝機は「需要が偏在するところ」にあり
まず、未来をつくる「The Great Company」を生み出すには、どんな環境が必要だろうか。
山海は、「カンブリア紀にさまざまな生物が生み出して行くように、新しいイノベーションを生み出す環境は自由度が高い場が必要です。一方で、育っていく場所というのは、実は民主的であればあるほど育ちにくいんです」と持論を展開した。
例えば、AIによる自動運転や顔認証システムについては、議論してコンセンサスを取りながら開発する国よりも、データが多い国の方が進化の速度の方が早いという。「日本の場合、チャレンジできるような未来の場づくりを作っていくべきです」と言及した。
では、企業にとって必要な変革とは何か。山海は「上場した企業がすぐに、なかなか意思決定ができない『大企業病』になる可能性がある」と指摘し、「大きな伸びを持たせて行く場合は、投資家と関わり合いながら、世界戦略を考える必要がある」と提言した。
続けて楠木は、もうひとつの視点として「イノベーションとは、問題の解決行為」であることに触れた。つまり、ポイントは「イノベーターが直面している問題は、切実な需要があるかどうか」であり、「供給がこれだけグローバルな規模になっても、需要はローカルであり、それぞれ違いがある」と語った。
楠木は、エクサウィザーズの事業に触れ、「認知症の社会的コストについて、世界に比べて、日本にはなんとしても解決したいという大きな需要がある。マクロで見れば、国内の人口が減少し、規制が厳しくても、需要が偏在しているところには非常に可能性があるのでは」と、見通しを語った。
最後に、イノベーションを起こし、未来をつくる「The Great Company」の定義を展開した。
楠木は「イノベーションは進歩ではありません。もっと速く、もっと良くなるのではなく、何が良いかという価値が変わることです」と語った。
山海は「目の前に、需要がたくさん見えている。そこに気づけて、課題解決に向けてやり続ける会社が大切だと思う。何をどう描くかによって、時間軸は変わるかもしれない。この感覚が大事でしょう」と呼び掛けた。
カンファレンスの最後には、Forbes JAPAN発行人の高野真が「Forbes JAPANを5年前に立ち上げ、この起業家ランキングも5年目。毎年形を変えて、今後も続けて行きたいです」と挨拶し、締めくくった。Forbes JAPANは、今後も変わりゆく新しい経済、社会の動きを追いかけ、新たな価値を世に問いかけていく。
会場で挨拶をするForbes JAPAN発行人 高野真 (撮影:小田駿一)