世界38カ国、800万人が愛読する経済誌の日本版

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いまこの記事を読んでいる人の多くは、何気なくSNSを開き、タイムライン上の発言やニュースを眺めているかもしれない。なかには、日々の何気ない出来事をつぶやいたり、旅先に行けば空や海の写真を撮り、そのときの気分を添えて投稿したりする人もいるだろう。その投稿に対する「いいね」やコメントも気になってしまうかもしれない。

今年6月に発刊された『insight(インサイト)──いまの自分を正しく知り、仕事と人生を劇的に変える自己認識の力』(英治出版)の著者、組織心理学者のターシャ・ユーリックは本書内で、そんな人々を「セルフィー症候群」であり「軽度の自己陶酔症(ナルシズム)」とし、警鐘を鳴らしている。

なぜ警鐘を鳴らすのか、それは「(今日食べたものは何か、今日はどこへ行ったかなどを投稿することで)自分に集中しすぎると、周りが見えなくなるだけでなく、逆説的に本当の自分を見つめる力も損なわれる」からだと、ユーリックは本書内で綴る。

これは、私たちの身近に起きる「自己認識力」が欠如していく一例である。ささいなことのように思えるが、自己認識の力はビジネスシーンと密接に関わっている。いま、世界のビジネスリーダーたちの間で「自己認識力(セルフアウェアネス)」は重要なキーワードになっているのだ。

監訳として同書に関わり、ラグビーをはじめとするスポーツ団体・また大企業のリーダー層に対しての指導者育成に関わるチームボックス代表の中竹竜二氏も「スポーツでもビジネスでも、ようやくその重要性に気づき始めている人が増えてきた」と話す。

なぜいま、自己認識力が重要視されるのか。それは一体どのように私たちに作用するのか。中竹氏に話を聞いた。



──ターシャ・ユーリックさんは、TEDトークの再生回数が190万回を超え、ビジネスパーソンにも大きな影響力を持つ組織心理学者です。なぜ今回この本の監訳を行うことになったか、中竹さんご自身の課題感をふくめ理由を教えてください。

私は日本ラグビーフットボール協会のコーチングディレクターとしても仕事をしていますが、指導者のコーチングを行うときに「リーダーに大切な素質」というものをいくつかに分類しています。その中で、あらゆる要素を支える重要な土台となるのが「イントラパーソナル」という言葉。つまり、「自己認識力」なんです。いわば、その人自身にしか持てない哲学ですね。

ラグビーのトップレベルのコーチたちに向けたコーチングでは、専門的なスキルを学び、マネジメントやコミュニケーションなど人間関係についてのことを学んだ後、最後に「自分の哲学を話す」、つまり自己認識を深めてもらうという流れになっています。これがすごくハードなんですが、これまでアカデミックに研究されてきた分野ではなかったんです。

もっとこの分野に関する研究が進んでほしいなと思っていたときに、去年、ターシャと話す機会があり、彼女が提唱する話は私が抱えていた課題感にフィットするなと感じたんです。スポーツでもビジネスでも、専門的なスキルやナレッジときちんと切り分けて「自分」という存在を理解することは、業界全体的にあまりやってこなかったことなので、私自身もしっかり理解したいと感じました。

構成=石原龍太郎

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