そのうちテクノロジー関連のハードウェア製品が、28億ドル以上を占めていた。台湾のテック企業の多くは、これまで中国に置いていた製造拠点を、母国に引き上げている。
調査企業FocusEconomicsのアナリストのEdward Gardnerは「台湾は米中の経済対立から最大の利益を得ている」と述べた。UNCTADによると米中の貿易摩擦は、中国の米国向け輸出額を350億ドル減少させたという。そのうち63%が中国以外の諸国に奪われており、残りは米国製のプロダクトでカバーされた。
台湾に次いで、この恩恵を受けたのはメキシコで、受益額は35億ドルに及んだ。3位はEUで受益額は27億ドルだった。
シンガポールのCIMB銀行のSong Seng Wunは、多国籍企業らは中国のリスクを分散することを狙っていると述べた。今回の米中の対立は、ドナルド・トランプが2018年3月に中国からの輸入品に制裁関税を発動したことから始まった。
米国は合計で5500億ドルの関税を中国製品に課しており、中国も報復措置として米国製品に1850億ドルの関税を課している。
台湾はエレクトロニクス分野で巨大な地位を占めており、台湾企業が中国で雇用する1000万人の6割が、テック関連で働いている。「台湾の大手企業らは、中国でのオペレーションを母国に引き上げようとしている」とSongは述べた。台湾政府もこの動きを支援しているという。
Songによると、世界最大の半導体製造ファウンドリである台湾TSMCも、その恩恵を受けているという。TSMCの今年第2四半期の売上は79億ドルで、第1四半期から10.2%の伸びとなった。
中国で暮らす台湾人の投資家たちも、中国から母国に資金を引き上げている。彼らは以前から中国での人件費の高騰や、知的財産権の侵害、生産性の低下の問題に悩んでいた。
台湾の国営メディアの中央通訊社(CNA)によると、10月29日時点で142人の台湾人投資家らが、合計で6100億台湾ドルを中国から引き上げたという。
日本や韓国の企業も数十年前から中国に製造拠点を構えてきたが、現在はサプライチェーンの多角化を進めた結果、中国への依存度はさほど高くないとCIMBのSongは述べた。
「一方で、台湾のエレクトロニクス企業にとって中国はこれまで主要な製造拠点だった。米中の対立の激化を受けて、彼らは急速に母国へのサプライチェーンの移転を進めている。これは台湾企業にとって合理的な選択だ」と彼は続けた。