中国外務省は12月2日、「米側の理不尽な振る舞いへの対応としてこの措置を決めた」と述べ、全米民主主義基金(NED)や国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)、フリーダム・ハウス(Freedom House)などの反中的NGOの活動に制裁を科すとした。
トランプが香港の民主化法案を承認したことで、米中の貿易交渉は一時的な停止状態となったとの見方もある。米国は12月15日に中国製品約1560億ドル(約17兆円)相当に15%の追加関税を発動する予定だが、第1段階の合意に達するまでこれを延期する見通しとされている。
ただし、中国の環球時報の報道によると中国政府側は合意の条件として、12月15日の追加関税の延期のみならず、米国が既に科している制裁関税の撤廃を求めているという。
「中国は香港問題を貿易交渉と切り離すことを望んでいる」と投資アドバイザー企業Fort Washington Investment AdvisorsのNicholas Sargenは述べた。「中国経済は減速傾向にあり、中国としては米国と合意に達したいはずだ」と彼は続けた。
12月2日の米国株式市場では株価が下落し、S&P 500はここ2カ月で最大の下げ幅を記録した。「中国政府は、かなりきわどい道を歩もうとしている。彼らが香港の問題に絡み、米国に貿易面での報復措置を行ったとしたら、米国側は即座に12月15日の関税引き上げを決定するだろう」とHarris Financial GroupのJamie Coxは述べた。
米中の貿易対立は17カ月もの間に及んでいるが、香港情勢が今後の交渉の鍵を握ることは確実だ。中国側は米国が香港の民主化を支援する法案を成立させたことを、内政干渉であると非難している。
トランプはここしばらくの間、香港に関して沈黙していたが、突如、香港の民主化支援を宣言し、そのことが中国側の強い反発を招いた。トランプは、香港が米中の貿易交渉を複雑化させる要因になると以前から述べていたが、両国の緊張はさらに高まった。
この緊張は株式市場にも大きな影響を与えている。米国の株式市場はサンクスギビングの休暇前に3日連続で最高値を更新したが、その勢いも消え去ろうとしている。
投資家らが懸念しているのは、香港の問題が発端となり、米中の貿易交渉が脱線してしまうことだ。そんな中、トランプは12月15日の追加関税の発動に踏み切るかどうかの決断を求められている。
「米中の双方は、これ以上の経済的ダメージが生じることは望んでいない」とIndependent Advisor Allianceの投資主任のChris Zaccarelliは述べている。「中国としては、これ以上、香港の状況が悪化すればさらなる国際的批判にさらされることになる。その一方で、米中が第1段階の合意に達する上で、香港絡みで生じた政治対立は無視できない」とZaccarelliは続けた。