ルイス・バラガンもそのジャカランダに特別な思いを持っていて、それがあの名建築を生んだと思うと、それを広めようとした松本さん、つまり日本人の感性は、世界に通じるのだなと感じます。
また、バラガンの自邸を見学すると、そこには日本に関する本が数多く残っていました。写真集をはじめ、日本の寺や彫刻、建築や庭園に関する書籍などが並んでおり、彼が日本の建築からもインスピレーションを受けていたのだろうことが伺えました。
話はメキシコから離れますが、昨年までドン ペリニヨンの最高醸造責任者を務めたリシャール・ジェフロワ氏は、引退発表時、次の取り組みとして「富山に行って日本酒をつくりたい」と答えていました。そして11月6日、彼が率いる酒造場が富山県立山町で着工。バラガン同様、日本の感性が世界のトップを魅了しています。
個人的には、AIをはじめとするテクノロジーの分野で日本が世界をリードするのは難しいのではないかと思っています。でも、感性の分野で世界トップレベルのものを持っています。日本には、四季で表情の変わる海と山があり、侵略されずに守られてきた小さい島国だからこその繊細さがある。その地で養われ、培われた感性というのは、外国人がひっくり返そうと思ってもできるものではありません。
そこに気づき、関心を持って見ているのが外国人であり、彼らの方が日本に詳しかったりするのは面白いなと思いますが、「花」という感性の分野に身を置くものとしては、日本独自の花の感性をもっと世界に広げていく必要があると感じました。
しなりがあり、柔らかく美しい日本のバラは、何度みても美しいもの。たおやかな茎に軽やかな葉、ふうわりと空気をまとって幾重にも重なった花弁……一本のバラでよいので、ぜひ見つめてみてください。
連載:Living With Flowers Every Day
過去記事はこちら>>