中国、製造業に国家基金設立 アメリカへの影響は?

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中国のこうした姿勢は、アメリカ企業に2つの悪い知らせをもたらす。

・ファーウェイなどが代わりのサプライヤーを見つければ、アメリカ企業の売上は減るだろう。分野によっては代わりが見つかりやすい。ファーウェイはメモリチップの購入先を、米マイクロンから、韓国のサムスンやSKハイニックス、中国の長江存儲科技(Yangtze Memory Technologies)に代えればいい。そうしたアジア企業の技術力はどんどん向上している。

・アメリカの小規模専門企業は、大きな打撃を受けるだろう。中国政府やファーウェイなどの大手企業は、競争の激しい世界市場では生き残れなかったであろう中国企業に投資をし、強化を図ろうとする。ファーウェイがそうせざるを得ないのは、代わりのサプライヤーが必要であるためだ。

中国におけるこうした動きは、アメリカ市場が世界最大で、生産規模の拡大と製造技術の向上にはアメリカ市場へのアクセスが欠かせなかった初期のころであれば問題にならなかったかもしれない。しかし、中国が電子部品の生産拠点ならびに市場として群を抜いて世界トップに立った今は、アメリカの大手テクノロジー企業にとって、深刻なマイナスの意味合いを持つ。アメリカの小規模企業にとって、存続の危機に迫られた中国の競合他社が、国から多額の資金援助を受けることは避けたい事態だ。

報道によれば、クアルコムは製品の50%を中国で販売しているが、同国での売上はすでに減り始めている。一方、ファーウェイ傘下で、同社製スマートフォン用キーチップを製造する半導体企業「ハイシリコン(HiSilicon:海思半导体)」は、ファーウェイが必要とするチップの70%を賄っていると見られている。

ハイシリコンはすでに、「台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC:台湾積体電路製造)」に対して最先端半導体プロセスノードの製造を依頼する企業としては最大の顧客となっている。つまり、アップルを抜いたのだ。これは、半導体業界の動向を追う人間にとっては天地がひっくり返るようなニュースだ。

問題は、米政府が貿易交渉に取引を行うような姿勢で臨み続けていることと、中国がきわめて長期的な視点に立った戦略を取っていることだ。短期的な成果を得るためにエンティティリストといった経済的手段を乱用することで、アメリカは進んで、「信頼できないサプライヤー」のように振る舞っている。そのような姿勢は、テクノロジーの世界市場においてのみならず、農産品を含むほかの製品の販売市場においても、アメリカ企業に悪影響をもたらすことになるだろう。

中国が、アメリカの穀物や豚肉を大量購入することに合意すれば、おそらく取引協定を結ぶことはできるだろう。しかし、中国がアメリカを、テクノロジー分野の信頼に足るサプライヤーだと思わない状態で、食料のサプライヤーとしてアメリカを信頼するだろうか。アメリカは、自ら招いた損害を取り戻すのに、一世代(あるいはそれ以上)の時間を要することになるかもしれない。

翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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