うつ病と不安の症状改善に適したヨガ、必要な「用量」とは?

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正確に言えば、ヨガはうつ病や不安症の治療方法として開発されたものではない。だが、過去の研究によって、これらの症状がある一人たちの一部にはかなり効果的であることが分かっている。

隔月発行の精神医学分野のジャーナル「Journal of Psychiatric Practice」11月号に掲載された新たな研究結果によれば、呼吸法の練習を含むヨガのクラスに3カ月間参加した人たちは練習の頻度にかかわらず、メンタルヘルスの状態に改善がみられた。

ボストン大学医学部とニューヨーク医科大学、ハーバード大学、コロンビア大学の研究者からなるチームはうつ病の患者32人にポーズの正確さを重視する「アイアンガーヨガ」を実践してもらった。

2つのグループに分けた参加者のうち、一方は90分間のクラス参加と自宅での30分間の練習をそれぞれ週に3回と4回、もう一方はそれぞれを週に2回と3回、12週間にわたって継続した。さらに、研究チームはメンタルヘルスの状態に関する変化を確認するため、開始時とその後4週間ごとにアンケート調査を実施。不安や抑うつ、肯定的または否定的な感情、睡眠の質などに関する質問に答えてもらった。

状態は改善したが─

その結果、開始から12週間後にはどちらのグループにも、積極性、平静さ、不安症とうつ病の症状、身体的疲労、睡眠の質に関する項目のほぼすべてにおいて、改善がみられた。特に大幅な変化が確認されたのは、より頻繁にヨガを行ったグループだった。研究チームは、つまりヨガには薬理学用語でいう「用量依存効果がある」ということだと考えている。

ただ、この研究はコントロールグループを設置していないため、ヨガを行わなかった場合、あるいはエアロビクスなどの他の運動をした場合との比較に基づいた評価を行うことができない。サンプルサイズが非常に小さいという問題点もある。

また、11月初めに発表された約8000人を対象とした研究では、うつ病を発症する遺伝的リスクが高い人でも1日わずか35分間の運動をするだけで、症状が出るリスクが大幅に低下する可能性があることが確認されている。ヨガのように強度の低い運動でも、効果はみられたという。

課題は“処方”の方法確立

呼吸法の練習を含むヨガをしているとき、脳は瞑想をしているときと同じような働き方をしているとみられる。そして過去の研究から、瞑想は私たちのストレスや恐怖に対する反応に変化をもたらすことが確認されている。

うつ病や不安症の人の脳では特に、自己参照的な処理に関連する領域が活性化されているとみられる。そして、瞑想はその領域の鎮静化にも効果的だとする研究結果もある。さらに、ゆっくりとした呼吸だけでも、そうした“鎮静化”を促す効果があるとされている。ヨガと瞑想が特定のメンタルヘルスの問題に効果的だとされる理由は、これらの点にもあるのだろう。

新たに発表された論文の著者は、「どの程度の効果を出したいかによって、処方する薬の量は変わる」「ヨガについても同じ考え方ができるかどうかを調査した…ヨガとうつ病の関係に関する過去の研究では、この点について掘り下げたものはない」と述べている。メンタルヘルスのために、ヨガを具体的にどの程度の“用量で処方”するべきかについて明確にするためには、今後のさらなる研究が必要となる。

編集=木内涼子

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