同社の成長を加速させている要因は何なのだろうか。
顧客対応分野の多くのブランドと同じように、プローズは有料ならびにオーガニック(無料)のソーシャルマーケティングで上々の結果を出している。2019年には、ポッドキャストやダイレクトメールといった、デジタルおよびノンデジタルの媒体利用を開始したほか、屋外(OOH)広告キャンペーンにも初めて挑戦した。
プラーはさらに、口コミも今までのところ成果を上げていると話す。口コミは効果の高い媒体の第3位であり、80%以上の顧客が、プローズを友人に勧めたいと回答したという。
とはいえ、急成長には課題が伴う。たとえば、受注生産数を増やせるよう(かつ、顧客満足度を維持できるよう)、より斬新な方法を考案し続けて、テクノロジーの活用をできるだけ速く進化させなくてはならない。
サプライチェーンと受注処理の管理に関して言えば、プローズは方法を進化させている。ローンチ当初は、そうした管理作業を半自動で行っていて、生産速度は1分につき1製品だった。しかし、会社が成長し、顧客ベースが拡大し続けたことから、より迅速に注文処理ができる新たなプロセスの開発に取り組んできた。
新しいプロセスは2020年前半に始まる予定で、今後は、受注処理スピードがいっそうアップし、パーソナライズされた製品の生産を大幅に拡大できる見込みだ。
プローズは近い将来、製品ラインアップも増やす計画だ(現在はおもに、通常のシャンプーやコンディショナー、ドライシャンプー、洗い流さないコンディショナーを販売している)。また、新しいカテゴリー(ヘアケア・グッズ)の製品も、年内に発売開始の予定だ。
プローズは今のところ、小売店との提携は考えておらず、当分は直販(D2C)ブランドというかたちを維持するつもりだ。
その理由として、現在のビジネスモデルが順調であることが挙げられる。また、徹底的にカウンセリングを行うことで、単なるワンクリックブランド以上の存在となり、D2C業界で差別化できているという自負もある。
サブスクリプション方式での製品提供は、同社が長期的に顧客ロイヤルティを維持し、デジタル販売戦略を実践していくためにも重要な側面だ。
「サブスクリプション方式は、成長促進の重要な手段となってきた。しかし、顧客との密接な関係を活かすことが重要だということも、われわれは確信している」とプラーは話す。「その2つを組み合わせることが、現在の成功をもたらした原動力だ」
では、昔ながらのブランド、とりわけバーティカル市場の美容ブランドは、パーソナライゼーションをテコにするプローズなどのD2Cブランドから、何を学べるのだろうか。
現代の消費者は、個人として対応してもらいたいという願いを持ち、大衆のひとりでいることを好まない。顧客セグメンテーションでは、もはや不十分だ。
「プローズでは、傷んだ髪やくせ毛といった大まかなニーズをもとに消費者を細分化するようなことはもうしていない。それでは顧客の要求や目的に誠実に対処できないとわかったからだ」とプラーは言う。
美容ブランドは、D2Cか否かを問わず、唯一無二の個人である消費者が、自分に最も適した製品を手に入れられるよう手助けすべきだと、プローズは考えている。