ㅤ鎌倉市在住のフリーランスライター兼編集者

フレグランスメーカー「LUZ」代表 天田 徹

専門ラボと自社製造工場をもち、これまでに3000以上ものオリジナル香水を開発・製造してきたフレグランスメーカー「LUZ」。代表の天田徹に、創業のきっかけや恩師からの教えを聞いた。


知人から誘われ「海外ブランド香水のネット通販事業」を手伝ったのを機に、香水の製造に興味をもち、1999年に創業。現在は香り専門のラボと自社製造工場をもつ「香りのクリエーションカンパニー」として、オリジナルブランドの立ち上げ、アパレルブランドやタレント、アニメキャラクターなどのオリジナル香水の開発・製造を請け負っています。

2017年には自社ブランド「J-Scent」シリーズを発売。「ほうじ茶」「落雁」「花見酒」「ラムネ」「力士」「花街」など20種類を揃え、おかげさまで「黒革」が今年ドバイで開催されたPure Beauty Global Awards 2019にて、世界30カ国、約500ブランドの中からBest New Nicheフレグランス賞を受賞しました。

自分にとっての転機は28歳のときに罹患したことです。睡眠が1日3時間という多忙な日々で、腎臓に腫瘍ができ、幸い手術で一命はとりとめましたが、ガラリと人生観が変わりました。「人生は一回きりだ。好きなことをしよう」──そう思って興味のあった映像制作会社に勤めはじめたものの、なぜか知人の誘いで香水業界に入ってしまい(笑)、香水を一からつくる面白さに目覚めていまに至ります。

“ものづくり”はもともと好きでした。1961年にTBSで放送された『七人の刑事』という生放送の連続ドラマがあるのですが、7人のうちのひとり、久保田刑事を演じた俳優が実は父なのです。少なからず影響を受けたのか、僕も大学で演劇を専攻することに。当時の玉川大学は芝居をもとに人間教育を行うという校風で、それこそ1年生から4年生までみんなが一体となって芝居をつくりました。演じたキャラクターで印象深いのは、妖怪に惑わされた白塗りの上皇(笑)。あとは舞踊や和太鼓もやりました。

ただ、僕は演じること以上に、裏方の仕事を含めてひとつの作品が完成していく、という過程にとても惹かれたのです。脚本は既成のものを使うのですが、芝居の設定や照明、美術は学生が一から考え、教授のもと演出補佐もし、発表する。それはいま社員一丸となって香水のコンセプトを考え、それに合う香りを研究し、ラベルやボトルのパッケージをデザインするのと非常に似ています。

恩師は、森永乳業で最終的に特別顧問にまでなられた菊地孝生さんです。就職活動中に父の紹介でお会いしたら、「卒業して森永乳業に入るのは今しかできないが、映像制作会社であれば5年後でも大丈夫」と諭されました。関連会社の社長でもあった菊地さんは入社3年目の僕を本社から引き抜き、自社の地区責任者に抜擢。会社をどう回すべきか、お金をどう使うべきか、人をどう使うべきか、お客様に対して何をしないといけないか、すべてにおいて裁量を与え、教えてくれたのです。

印象に残っている言葉は「人を騙して喜ばす」。悪い意味の騙すではなく、人を予想もつかない展開で驚かせ喜ばせるという意味で、最終的に人を笑顔にして、喜んでもらうことが大切だということです。僕が今日までものづくりを愉しみながら経営を続けてこられたのは菊地さんあってのことで、鬼籍に入られた今も感謝に堪えません。

構成=堀 香織 写真=yOU(河崎夕子)

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