同社は2008年、配達状況を地図上で確認できる「ピザ・トラッカー」というシステムを発表した。
たわいもないアイデアではあった。しかし、パソコンによる注文システムを進化させ、続いてスマートフォンでの注文システムも導入。プロセスにゲーム的な要素を取り入れたことで、新たな顧客の獲得へとつながった。
その1年後の2009年には、数百万ドルを注ぎ込んで、ピザ全種のレシピ見直しを実施。ベテラン社員だったパトリック・ドイルが2010年に最高経営責任者(CEO)に就任すると、テクノロジーの強化に着手した。
ドイルのチームはデジタル戦略を推し進め、スマートフォンでの注文と、スマートTV上で起動するだけでオーダーできる「ゼロクリック・アプリ」も開始した。同社の総売上は、2011年は16億ドルだったが、2017年には34億ドルまで伸びた。
利益は、デジタル注文のほうが多かった。全メニューが画面に表示されるので、客にとっては追加注文がしやすいのだ。利益率の高いチーズ入り焼き立てパン「Cheesy Bread」や炭酸飲料を追加しようか、という気持ちになるわけだ。
同社のビジネスは、デジタル革命に向けて完璧なポジションに位置していた。ところが、迅速なサービスを提供するレストラン業界は、不意にアナログな方向へと舵を切った。
きっかけは、ウーバー・テクノロジーズの一部門である「ウーバーイーツ(Uber Eats)」や、株式非公開企業ドアダッシュ(DoorDash)の「グラブハブ(GrubHub)」などが、レストランで人間が料理を受け取って客のところまで届けるデリバリーサービスを始めたことだ。
ドミノ・ピザにとってはそれまで、すばやくピザを宅配するということが競争上の中心的な強みだったのだが、突如として、ほかの飲食店もこの強みに対抗できるようになった。マクドナルドも、2019年7月にドアダッシュと提携すると発表した。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』は2019年7月、ドミノ・ピザの四半期売上が7年ぶりの最低水準に落ち込んだと報じた。こうした流れは10月まで続き、第3四半期の売上目標ならびに利益目標は、ともに未達成に終わった。
売上は8億2080万ドルで4.4%増となったものの、予想額の8億2390万ドルには届かなかった。利益は9240万ドルだった。
ドミノ・ピザの経営陣はこれまで一貫して、テクノロジーの最先端を走ってきた。そして今、ソリューションとして目を向けているのもテクノロジーだ。