これまでの人生が試される場所 大人こそキューバへ行くべき8つの理由

Kriangkrai Thitimakorn(Getty Images)

「キューバは若いうちに行ったほうがいい」と、先輩諸氏は言った。日本から飛行機を乗り継いて約20時間、英語より断然スペイン語という基本条件だけで、旅慣れた者でも若干の躊躇を覚える。

体力のある若者向けの旅先とする意見も納得できるが、ここはあえて断言しよう。大人こそ目指すべき旅先、これまでの経験と知識が世界で通用するかを試すことができる「大規模なテスト会場」、それがキューバだ。

テスト1:インターネット断食という洗礼

「気づくとスマートフォンを見ている」という軽度のネット依存は、誰でも身に覚えがあるだろう。キューバではまず、これが劇的に改善される。なぜなら、ネットの利用は地元の人たちも観光客もプリペイドカード制。WiFiスポットは公園や広場などに設置され、一部の高級ホテルやカサ(認可制の民宿)では建物内でも接続できるが、カードの使用は必須となる。

キューバのトリニダ広場 
音楽と酒とネットを求める人々が夜な夜な集まるトリニダの広場

常時接続や海外ポケットWiFiのレンタルに慣れきっていると、カルチャーショックを受けるかもしれない。だが、ひと昔の前の旅ならこの状況は当然。ここは当時を思い出して、冊子のガイドブックやオフラインで使用できるマップアプリなどで対応すれば、たいした不便は感じない。

ネット接続の時間が限られると、ネットサーフィンという一種の「悪習」は必然的に途絶える。個人の結論では、30分ほどメールなどをチェックすれば充分。数日も経てば、ネット上に「絶対見るべき情報」はほぼ存在しないことがわかる。SNSに流れる他人の生活や食事の内容、仕事の愚痴などはその筆頭だ。

テスト2:ゼロから人間関係をつくる方法

キューバに暮らす人たちがネットを否定しているわけではない。WiFiスポットにはいつも大勢の地元民がいる。ただし、日本と圧倒的に異なるものは、彼らがそれにかける時間だ。プリペイドカードが高価なこともあるが、多くは1時間ほどで立ち去る。それ以外の時間は、生身のコミュニケーションで忙しい。

歴史的・政治的な背景から、キューバには濃厚なネットワーク社会が形成されている。知り合いの知り合いは皆知り合いで、挨拶や立ち話は生活の一部。それは外国人相手でも同じで、たとえば東洋人が町を歩いていると声が飛ぶ。

「ヤパン?(日本人?)」

スペイン語は無理、と返せば、片言の英語で話が続く。若いころに柔道を習っていたこと、師範が東京に住んでいること、日本は美しい国だと聞いて育ったこと。ひとしきり話した後は、礼儀正しく別れの握手だ。

「話せて楽しかった。ありがとう。気をつけて」

キューバの街角で立ち話する人たち
日中はもちろん夜中でも立ち話をする

夜の通りには音楽が流れている。ドアを開け放った集合住宅の一室、近隣住民たちのホームパーティらしい。ダンスホールに変わった廊下を覗き見ていると、旅人の存在に気づいた女性が手招きしてくれる。

「ちょっと来てみない? 今日は彼女の誕生日なのよ」
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文・写真=オカダカヅエ

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